研究分担者 |
梶 昭 ペンシルヴァニア大学, 医学部(米国), 教授
AUSTIN S. 国立癌研究所(米国), 部長
田渕 晃 信州大学, 農学部, 助手 (50236725)
大西 真 信州大学, 医学部, 助手 (10233214)
AUSTIN Stuart National Cancer Institute, USA Research Assoicate
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研究概要 |
A.Dr.Austinグループとの共同研究 【研究目的】 プラスミドRts1の複製開始蛋白質RepA(288アミノ酸残基)は、複製開始部位oriに結合して複製をポジティブに開始させる働きと、複製が過剰に起きないようネガティブに調節する働きを併せ持つ蛋白質である。この二つの機能のRepA分子上における局在を明らかにすることを目的として、大腸菌ファージP1の複製開始蛋白質RepAとの間でキメラ蛋白質を作成し、機能解析を行なった。P1-RepA(286アミノ酸残基)をキメラ作成の相手としたのは、Rts1-RepAとP1-RepAとはアミノ酸配列上60%の相同性があるにも拘らず、特異性は異なるためで、このことはキメラ作成を容易にするばかりでなく、両機能の分離をはかることができると推測されたからである。 【昨年度までの成果】 RepA N末端がRts1-RepA由来、C末端側がP1-RepA由来の一連のキメラ蛋白質(RepAXn)について機能解析を行い、ori結合能はRepA N末端側113-129aa部位に存在すること、これよりC末端側の177-206aa部位が加わることにより、oriの活性化(複製開始)が起こることを報告した(J.Bacteriol.177:4028-4035,1995)。今年度は、RepA N末端側がP1-RepA由来、C末端側がRts1-RepA由来の一連のキメラ蛋白質RepALXnを作成し、機能を解析した。 【本年度の研究成果】 1、RepALXnの構成:RepALX12(P1-RepA由来256aa/Rts1-RepA由来31aa)、RepALX13(205/82)、RepALX15(144/143)、RepALX17(112/75)の4種類が得られた。 2、RepALXnのRts1-ori結合能:RepALX15はRts1-RepAwtとほぼ同等の強いori結合能を示し、RepALX12がこれに次いだ。そしてRepALX13,RepALX17の順に結合能は減弱した。 3、RepALXnによるori活性化:P1-oriに対してはRepALX12とRepALX13が活性化した。一方、Rts1-oriに対しては、RepALX12,RepALX15,RepALX17が活性化能を示した。RepAXn(N末端がRts1-RepA由来、C末端がP1-RepA由来)とRts1-oriとの関係でも、RepAX12とRepAx13のみがoriを活性化しており(既報)、この限りにおいて矛盾はなく、Rts1-RepA,P1-RepA共にN末端側に各々のoriを特異的に活性化する機能が存在することが確認された。RepALX12は、Rts1-RepAのC末端31アミノ酸残基を含むに過ぎないにも拘らずRts1-oriを活性化したことは極めて奇異であるが、この場合活性化されたoriプラスミドは極めて不安定であった。RepALX15とRepALX17がRts1-oriを活性化したことに関しては、既報のようにRts1-RepAの177〜206aa部位がRts1-oriの活性化に必須であるとの推定に一致する。 4、RepALXnのオートリプレッサー能:Rts1-RepAwtが自らのプロモータ活性を25%にまで抑えたのに対して、RepALX12,RepALX17は軽度の抑制を、RepALX15は中等度の抑制を示した。P1-RepAwtも軽度に抑制したが、次のDNA結合実験に示すように、P1-RepAwtはRts1-oriに結合できるので、当然の結果と考えられる。このようにRepA分子の最も重要な機能であるori活性化には177-206aa部位が必須であることが昨年度からの研究により明らかになった。C末端の機能としては過剰な複製を抑えるネガティブな働きが推測されるが、未だ明確な成績は得られていない。 B.Dr.梶グループとの共同研究 プラスミドRts1上に存在する宿主菌増殖抑制遺伝子(hig)について次のような成績が得られた。higはhigA,B両遺伝子より成り、HigB(92aa)が対宿主菌キラー活性を示し、HigA(104aa)はhigbの発現を抑制する(以上の成果はBiochem Biophys Res Commun誌に印刷中)。higは以前梶グループがすでに報告したtsgとは全く異なることも明らかにした。
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