研究課題
国際学術研究
地球磁気圏内に発生する最も基本的な擾乱であるオーロラ嵐に伴って様々な擾乱現象が発生している。このオーロラ嵐の及ぼす電磁環境の変動の極域における磁気共役性と、これらの擾乱エネルギーの中・低緯度や赤道域までの輸送・伝播過程を解明するために、オーロラ帯の磁気共役点に位置するアラスカ・マッコ-リ島において、地磁気・大気電場・イメージングリオメータ並びに光学観測機器を用いて総合の国際共同観測研究を実施することが本研究の目的であった。また、北太平洋の極域に発生した擾乱が中・低緯度や赤道域の電磁場とどの様に関連しているかを観測的に調べるために、パラオ・ハワイ諸島において同時の地磁気観測を実施することも緊急の課題であった。さらに、アラスカ大学並びに東京大学が計画している北米大陸での地上多点観測網や、名古屋大学太陽地球環境研究所がSTEP国際共同特別事業の期間に実施している210度磁気子午線沿いの観測網のシベリア域での地磁気・光学観測とも組み合わせた組織的な同時観測を実行することにより、日本を含む極東域の高緯度から赤道域までのグローバルな領域においてオーロラ嵐の及ぼす電磁環境変動過程を究明することも本国際学術研究の目的であった。平成7年度の調査研究は以下の様に計画的に実施された。(1)アラスカ地域での観測調査・研究については、現地研究者との打ち合せを行なった後、平成6年度に予備調査したアラスカ観測点カツビューで日本の研究分担者が磁力計、オーロラ観測機器の点検、調査を行い電磁気的な総合観測を実施した。(2)カツビューの磁気共役点に位置するオーストッリアのマッコ-リ島での地磁気・オーロラ観測については、オーストラリア南極庁の研究者との事前連絡を綿密に行い、現地での同時観測データをほぼ完全に確保できた。(3)アラスカ域で観測されるオーロラの経度方向への広がりと動態を調べるために、研究者代表者を含む日本側の研究者がロシアのディキシィーに赴き、オーロラの同時観測研究を実施した。又、ティキシィーの低緯度側のズリヤンカに新たな光学観測を設置し、オーロラの観測を開始した。(4)カナダ地域での極冠域のオーロラ観測研究については、東京大学のオーロラ観測計画と緊密な連携を取り、同時観測研究を実施することができた。(5)アラスカ・シベリア域で発生したオーロラ擾乱に対応する低緯度、赤道域の他磁気変動を調べるために、パラオ、ハワイ諸島にアラスカ大学の研究分担者を派遣し、地磁気観測機を用いた磁気圏擾乱の侵入・伝播の観測研究を行った。(6)又、夜側のアラスカ域で観測されるオーロラに対する昼カスプ域の粒子環境変動観測の為に、日本の研究分担者をノルウェーのニ-オルソン島に派遣し,オーロラの昼夜同時観測研究を実施した。(7)カツビュー観測点にあるアラスカ大学の施設で、アラスカ大学及び現地協力者の協力により我が国の装置で観測を継続する一方、同大学が所有するオーロラ・地磁気のネットワークデータのコピーを取り、比較解析研究を開始した。(8)ロシア域のデータ解析研をすすめる為に、モスクワの地球物理研究所に研究代表者が赴き、研究成果のまとめ並びに今後の成果の発表と研究の発展についての打ち合せを行い成果を上げることができた。以上の観測・データ収集・比較解析研究から、オーロラ嵐に伴う擾乱の輸送過程、sc/si地場擾乱の赤道域への侵入過程、ULF波動の南北半球での非対称に関する結論が次の様に導き出された。[1]東向きオーロラエレクトロジェトと磁気赤道に発達するジェト電流とが非常に似た変動をすることが発見され、数分から数時間周期帯の極冠域の変動電場の赤道域への侵入過程の傍証が得られた。[II]sc/siの地磁気変動の振幅を低緯度共役点で観測すると南北非対称性が観られ、季節変化していることが発見された。これは磁気圏境界層に生じる電流に比べて、極冠域に侵入した変動電場が低緯側までDP-2型の電離層電流を大きく誘起していることを示唆している。[III]高緯度・低緯度共役点で観測されるPc3-5のULF波動振幅に南北非対称性が発見され、これまでの電離層効果並びに磁力線振動論論の見直しをせまる観測事実が得られた。
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