研究課題
平成5年度はグアニリンの化学合成、構造解析、および細胞学の研究を進めた。1.グアニリンおよびプログアニリンの化学合成:グアニリンには2のジスルフィド結合が存在する。熱耐性エンテロトキシンと類似の4-12位、7-15位にジスルフィド結合を有するグアニリンと4-15位、7-12位にジスルフィド結合を有するグアニリン異性体を合成した。さらにヒトグアニリン前駆体cDNA構造から推定されるプログアニリン1-15およびプログアニリン20-30を合成した。2.グアニリンの構造解析:天然型合成グアニリンのNMRスペクトル分析を行ったところ、2種類の物質が1:1で混在していると思われるスペクトルが得られた。そこで、再度シークエンス、HPLCおよびLSIMS分析を行ったところ、単一物質であった。これらの成績は、グアニリンはジスルフィド結合の組み合わせだけではなく、立体異性体が存在する可能性が示唆された。3.グアニリンの細胞学:グアニリンおよびプログアニリンをサイログロブリンまたはKLHにコンジュゲートして、家兎に免疫した。グアニリンに対する抗体の力価は上がらなかったが、プログアニリンに対する抗体がえられた。この抗体を用いて、ラットの消化管におけるグアニリン産生細胞の分布を免疫組織化学的に検索した。プログアニリン陽性細胞は、消化管粘膜の陰窩に存在し、絨毛には存在しなかった。プログアニリン陽性細胞は形態学的にはセロトニンを含有するエンテロクロマフィン細胞に類似していたが、セロトニン陽性細胞に比べ、数は少なかった。プログアニリン陽性細胞はラットの胃幽門分、十二指腸に多く、回腸、結腸では少なかった。これらの成績は、グアニリンがこれまで知られていない、消化管の重要な調節因子であることを示唆している。
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