研究課題/領域番号 |
06044115
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松波 弘之 京都大学, 工学研究科, 教授 (50026035)
|
研究分担者 |
PENSL G. エルランゲン大学, 応用物理研究所, 主幹研究員
CHOYKE W.J. ピッツバーグ大学, 理学部, 教授
木本 恒暢 京都大学, 工学研究科, 助手 (80225078)
|
研究期間 (年度) |
1994 – 1995
|
キーワード | シリコンカーバイド / エピタキシャル成長 / フォトルミネセンス / 深い準位 / イオン注入 / パワーデバイス |
研究概要 |
本研究では、ワイドギャップ半導体SiCの高品質・高純度結晶を作製し、電気的、光学的評価によりその基礎物性を明らかにするとともに、高性能パワーデバイスへの応用を検討した。以下に本研究で得られた主な結果をまとめる。 1.高品質SiC単結晶の作製と物性評価 (1)一般にSiC結晶は成長雰囲気からの窒素(ドナー)の混入により10^<16>cm^<-3>程度のn型を示す。気相エピタキシャル成長法により作製したSiCホモエピタキシャル成長層のドナー密度は成長時のC/Si比に依存し、C/Si比が4以上の条件で成長することにより、アンドープ成長層のドナー密度を1x10_<14>cm^<-3>まで低減した。 (2)SiC成長層の低温(2K)フォトルミネセンススペクトルは中性窒素束縛励起子発光と自由励起子発光が支配的であった。間接遷移型半導体であるSiCにおいて自由励起子発光が観測されることは、成長層が高品質・高純度であることを裏付けている。また、Al、B、Tiに関係する発光ピークは見られず、不純物混入は極めて少ないことが判明した。 (3)アドミッタンス法により、SiC中の窒素ドナーの準位を調べた。cubic siteを置換した窒素ドナーのイオン化エネルギーは約110meV、hexagonal siteを置換した窒素ドナーでは約50meVである。 (4)DLTS測定によりn型SiC成長層中の深い準位を調べた。伝導帯端から約0.6eVのエネルギー準位に電子トラップが観測されたが、その密度は1x10^<13>cm^<-3>程度と非常に少なく、成長層は高品質であることが明らかになった。 (5)SiC成長層中に見られる電子トラップは、H、Heなどのイオン注入によって形成される欠陥と同一であること、1700℃の高温アニールを施しても安定に存在することが分かった。また、電界強度依存DLTS測定から、この欠陥の電荷状態は0/-アクセプタ型であることを明らかにした。さらにこの点欠陥に関連する特有の束縛励起子発光(フォトルミネセンス)が見られることも判明した。フォトルミネセンスの発光ピークのフォノンレプリカの詳細な解析から、この電子トラップはSiC空格子欠陥であると推測される。現在、この電子トラップ密度の形成と成長条件の関係を調べている。 2.高性能SiCパワーデバイスの作製 (1)SiC成長層にB、Alのイオン注入を行い、注入分布を二次イオン質量分析により評価した。SiC中の不純物の拡散係数は小さいので、1500℃の高温アニールを施しても注入不純物の再分布は無視できるほど小さい。 (2)ラザフォード後方散乱によりB、Alイオン注入層の損傷を評価した。B注入層の方が、注入イオンの質量が小さいために損傷は小さい。完全なアモルファス化が生じる臨界ド-ズ量はBイオン注入の場合5x10^<15>cm^<-2>、Al注入の場合1x10^<15>cm^<-2>と見積れる。 (3)注入後のアニール温度が高いほど、注入不純物の活性化が向上することから、1500℃でのアニールが最適であると判断した。Bアクセプタの準位が比較的深いため(約350meV)、Bイオン注入層は10〜100Ωcmの高抵抗層となる。一方、Alイオン注入層は明らかにp型であり、22kΩ/□の比較的低いシート抵抗を得た。 (4)Bイオン注入により形成した高抵抗層をSchottkyダイオード(Schottky電極:Ti、オーミック電極:Ni)のエッジタ-ミネーションに適用し、逆方向リ-ク電流の低減と耐圧の向上を達成した。具体的には耐圧1.7kV、オン抵抗5mΩcm^2というSiやGaAsでは実現不可能な高性能パワーダイオードを作製した。このダイオードは20nsec以下の高速スイッチングが可能であり、高耐圧・低損失・高速の新世代パワーダイオードとして有望である。 今後はp型SiC成長層中の欠陥評価、SiO_2/SiC界面特性の評価が必要である。
|