研究課題
1989年来の共同研究により、臓器のViabilityの判定、移植後の的確な機能の評価法として、血中ケトン体比を用いることの有効性を説明してきた。本研究では肝臓移植において移植再灌流障害における血管内皮の障害をはじめとする微小循環の障害もATPを供給するミトコンドリアの障害とならんで重要である点に着目し、近赤外光分析を用いて肝臓移植周術期に利用する共同研究を開始した。山岡、尾崎、木内、上田がドイツに出張し、近赤外光分析装置をハノ-ファーに搬入、現地でセットアップし、ハノ-ファー医科大学における脳死肝移植のグラフト評価を行った。肝組織の酸素化が遅れ、シヌソイドレベルのヘモグロビン酸素飽和度が低い場合、primary non-functioningとなる例があったが、一方、その両方が高い症例にもnon-functioningが出現したことから、肝障害が進行し、シャント率の高いものが後者のパターンを示す可能性があると推論している。これらの変化は、京都大学での生体部分肝移植の肝組織酸素化とそのheterogeneityの回復過程と肝細胞内酸化の回避過程に時間的なずれがあり、それが血流再開後の臓器機能の立ち上がりと密接な関連があった事実との相違であり、冷浸漬保存時間の短い生体部分肝移植の有利な点であろう。現在、数論にまとめ国際誌に投稿中である。
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