研究課題/領域番号 |
06044128
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小杉 眞司 京都大学, 医学研究科, 助手 (50252432)
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研究分担者 |
KOHN Leonard NIDDK Cell Regulation Section, Chief
須川 秀夫 京都大学, 医学研究科, 講師 (70162857)
赤水 尚史 京都大学, 医学研究科, 助手 (20231813)
森 徹 京都大学, 医学研究科, 教授 (40026894)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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キーワード | TSH受容体 / LH受容体 / FSH受容体 / 糖蛋白ホルモン受容体 / 情報伝達機構 / constitutive activation / 家族性男子思春期早発症 / プランマー病 |
研究概要 |
TSH(甲状腺刺激ホルモン)受容体の情報伝達機構について詳しい検討を細胞内の3つのループ及びC末端細胞内尾部のsite-directed mutagenesisを用いて行い、以下のような結果を得た。まず、Gsとの作用部位としては第2細胞内ループの中央部が重要であること、Gqとの作用部位は第1細胞内ループのほぼ全域、第2細胞内ループ中央部ややH末端より、第3細胞内ループN末部とC末部、細胞内尾部のN末3分の1、と広範にわたることが明らかとなった。第3細胞内ループのアミノ酸残基617-620の部分を置換したミュータントでは、TSHなどのアゴニストの刺激なしにcAMPやイノシトールリン酸のレベルが野生株に比較して増加する、いわゆるconstitutive activationを起こすことを明らかとした。これは糖蛋白ホルモン受容体でも変異によりconstitutive activationを起こしうることを示したはじめてのものである。その後、プランマー病でTSH受容体変異が存在し、病因となっていることが示されたが、我々も、同じくプランマー病で同定された変異Asp^<633>→Glu/Tyr、Thr^<632>→Ile、Phe^<631>→Cysが表現実験でconstitutive activationを起こし直接の病因となっていることを証明した。それまで報告されたconstitutive activationを示す変異は全て膜貫通領域のものばかりであったが、TSH受容体細胞外領域のSS結合で囲まれたループのdeletionによってもconstitutive activationが起こることを初めて報告した。また、細胞外ループの変異もシグナル伝達に関与することを示した。これらは、細胞外領域と細胞膜貫通部分が協調して受容体の活性化を起こすことを示唆するものである。さらに、TSH受容体に付加される糖についても検討を加え、種によって異なることを示した。 LH(黄体化ホルモン)受容体については、家族性男子思春期早発症(FMPP)において、受容体の第6膜貫通ヘリックスの点変異Asp^<578>→Gly (GAT→GGT)を活性化型変異として初めて同定し、表現実験によって直接の病因であることを証明したが、更に多くの家系を検索することにより、同じく第6細胞膜貫通部分にThr^<577>→Ile (ACC→ATC)を、第6細胞膜貫通部分と第3細胞内ループに境界部分にMet^<571>→Ile (ATG→ATA)をやはり点変異として同定し、表現実験によってconstitutive activationを起こすことを確認し、それぞれの家系で直接の病因となっていることを証明した。さらに、男子思春期早発症の孤発例(SMPP)においてAsp^<578>→Tyr (GAT→TAT)を同定し、表現実験を行ったところ、それまでFMPPで同定されたものより著しく強いcAMP系のconstitutive activationとそれまでは認められなかったイノシトールリン酸系のconstitutive activationをも起こすことが明らかとなった。この症例は、通常のFMPPよりも早い発症とより強い臨床症状、睾丸組織におけるLeydig細胞の著しい過形成が示され、genotype-pathology-phenotypeの一致が示された。Asp^<578>の重要性について、他のアミノ酸残基について検討した。その結果、この部位のAspの側鎖によって形成される水素結合がLH受容体を非活性化状態に維持するために必要なこと(すなわち水素結合を形成できないアミノ酸への置換ではconstitutive activationが起こる)、さらにTyrやPheなどの立体的に大きなアミノ酸への置換ではより強いconstitutive activationが起こり、7つの膜貫通へリックス相互間の非活性化状態維持のための他の構造にも影響すること明らかとなった。 FSH(卵胞刺激ホルモン)受容体については、今まで、TSH受容体やLH受容体のようなダブルシグナリングは示されていなかったが、TSH・LH受容体に用いたのと同様の方法を用いて、cAMP系とインシトールリン酸系のダブルシグナルを起こすことを証明した。
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