研究課題
Kashin Beck病(KBD)は中華人民共和国の東北地方から西安近郊の農村部にかけてのみ多発する軟骨代謝異常症である。この地方では、本症の患者数が200万人にも達すると言われているが、未だにその病因が解明されていない。代表研究者(鈴木不二男)らは、白求恩医科大学地方病研究所(吉林省長春市)の楊 同書教授(生化学)らとともにこの病因を解明するべく国際共同研究(平成3、4年度)を実施したが、より新たな観点から本共同研究を継続するよう依頼された。そこで今回は、同研究所の楊教授のほか、李 広生教授(病理学)、顔い群教授(生化学)および張 矢遠教授(生化学)にも参加を求めて、代表研究者らが確立した軟骨細胞培養系を利用する細胞レベルでのKBDモデル系を利用して、KBDの病因解明を試みた。まず代表研究者が中国に赴き、軟骨代謝研究の最近の動向を紹介するとともに、共同実験の打ち合わせ、および病院を観察をした。次いで楊教授ら4名の中国側研究者を大阪大学、広島大学および東京慈恵会医科大学に招き、情報交換および実験を行った。実験は主として顔教授が担当した。以前の共同研究で、軟骨細胞レベルでのKBDモデル系が確立されたので、今回は病区から採取した患者血清のウサギ肋軟骨細胞培養系に対する影響を検討した。その結果、患者血清を添加すると、軟骨基質プロテオグリカンの遊離・分解が促進されること、とくにその促進は肥大軟骨細胞層で著明であることが分かった。また患者血清を添加すると培養液中にGelatinase活性が検出され、さらに培養を続けると正常血清を添加した系では、Matrix metalloproteinase-2(MMP-2)しか認められなかったが、患者血清を添加するとMMP-2のほかにMMP-9活性も出現した。したがってKBD病患者の血清中にはMMP-9産生を促進するサイトカインが存在することが明らかとなった。次年度も患者血清の軟骨破壊に及ぼす影響について検討を続けたい。
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