研究概要 |
1.揮発性有毒有機化合物(TVOC)の遅延特性:ガスクロマトグラフを用いたGC-マイクロカラム法において土壌マイクロカラム内の水分を一定に保つ装置を開発し,TVOCの遅延に及ぼす水分量の影響を調べた.その結果,静的(拡散型)条件下における遅延係数に比べて,動的(移流拡散)な条件下では,遅延係数派およそ1/100程度に減少することが明らかになった.また,水分量の減少とともに遅延係数は急激に増大する.用いたTVOCはトリクロロエタンとトルエン,用いた土壌はマサ土とYolo loamである. 2.農薬の吸脱着と遅延特性:農薬アシュラムとシマジンを用いて,土壌への吸脱着がどのような吸着等温線に従うかを調べた.その結果,フロインドリッヒ型,ヘンリー型の吸脱着に適合することが分かった.遅延との関係においては,従来,瞬間可逆平衡型(ヘンリー型)吸着を仮定してFlow実験から遅延係数が求められていたが,吸着が強い物質ほど,その仮定には従わないことが示された.本研究では,ヘンリー型と時間依存型(非平衡)の両方の吸着式を含んだモデルを用いて,農薬の土壌内移動を説明した. 3.拡散型における2成分競合吸着:拡散チェンバー法により,静的(拡散のみ)な条件下で,水分とTVOCの2成分系の吸着,遅延について調べ,乾燥土壌においては,TVOCの土壌への吸着はヘンリー則に従わないこと,湿潤状態(水分子4層以上)では,水分がTVOCの溶媒として働いていることが明らかになった.1.の動的条件に比べ約100倍の遅延係数を得た. 4.物質移動モデルの開発・拡張:TVOCの土壌内移動を記述する3次元解析モデルをはじめとしいくつかのモデルを開発した.3.で得られたデータをよく記述する指数型モデル,MCSモデルをさらに簡略化したSemiAnalyticalモデル,浸透水フロントを簡便に予測する3パラメータモデルなどである.
|