研究課題/領域番号 |
06044183
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
上村 春樹 長崎大学, 熱帯医学研究所, 講師 (60184975)
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研究分担者 |
EICHINGER Da ニューヨーク大学, 医学部, 助教授
SCHENKMAN Se エスコラパウリスタ医学研究所, 教授
神原 廣二 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (20029789)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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キーワード | トリパノソーマ / トランスシアリダーゼ / シアル酸 / 細胞侵入 / トリポマスチゴ-ト / シャーガス病 / 重複遺伝子 |
研究概要 |
トランスシアリダーゼ(TS)は、現在までのところトリパノソーマ科原虫のみから検出されているシアル酸転移酵素である。この酵素は、糖複合体にα2,3結合したシアル酸を切断して別の糖鎖の末端ガラクトースに転移させる活性を示す。最初この酵素は、アメリカトリパノソーマ症、シャーガス病の病原原虫Trpanosoma cruziに見つけられ、感染型であるtrypomastigoteが宿主細胞に侵入する時、あるいは宿主の防御機構から免れる際に重要であることが、研究分担者であるSchenkmanらによって示唆されてきた。我々はこの共同研究に先立って、TS遺伝子をクローニングして、T.cruzi原虫には互いによく似た遺伝子が多数存在し、その一部の生成物のみに活性があることを明らかにしている。 1。T.cruzi TSの多様性の解析 単離していた活性型と不活性型の全構造を決定し、酵素活性の有無を決定しているのは、150程度のアミノ酸からなる領域に存在する幾つかのアミノ酸置換であることを確認した。それを基にして、活性型と不活性型のT遺伝子の割合を調べ、約半々であるという結果を得た。 2。T.cruzi epimastigoteで発現しているTS Schenkmanのグループは、昆虫内でのepimastigoteで発現しているTSのcDNAを得、C末端の12アミノ酸リピートのないこのトランスシアリダーゼは、リピートのあるもののN末端側と非常によく似ていることを明らかにした。次いで、その発現調節、局在性を調べるために遺伝子DNAを単離し、このTSにも幾つかの異なる遺伝子が存在することが明らかにした。リピートのある遺伝子と比較すると、酵素活性を担っている領域は70%程度の相同性があるのに対し、発現を制御していると考えられる領域にはほとんど相同性がみられなかつた。同じ酵素活性を示すタンパクが、異なる制御を受けて異なる時期に発現している興味ある例なので、それぞれにおけるTSの機能、制御機構の解明を目的として研究を進めている。 3。T.cruzi TS遺伝子の存在様式の解析 これまでの実験から、T.cruziにはtrypomastigoteで発現しているTSと、epimastigoteのTSがあり、しかもそれらがともに数十の遺伝子からなっていることがわかった。これらが別々に存在しているのか固まって存在するのかを、コスミッドベクターへのクローニング、パルスフィールドゲル電気泳動で解析した。Trypomastigoteで発現しているTSとepimastigoteのTSは別々の染色体にのっていること、C末端にリピートのあるTSは12以上連続して存在していること、1原虫当り30以上のTS遺伝子を持っていることを明らかにすることが出来た。 4。T.rangeli TS遺伝子の単離と塩基配列の決定 同じトリパノソーマで別の種類の原虫であるT.rangeliにも類似の酵素が存在する。それはシアル酸のところで加水分解する活性は示すが、転移する活性は示さない。転移活性に必要な領域を探る目的で、Eichingerのグループがクローニングを行った。この遺伝子にも幾つか構造の異なるものが存在するが、現在、活性型を単離することが出来たので、T.cruzi遺伝子との比較から転移活性を担ったいる領域を探っている最終段階である。 5。T.congolense TSの発現調節 T.cruziに特徴的と考えられていたトランスシアリダーゼ活性が、アフリカトリパノソーマTrypanosoma bruceiの昆虫型procyclic formでも検出されることが報告された。。しかし他のstageについてはまだ明らかになっていない。私達は、アフリカトリパノソーマの全てのstageが培養で得られるTrypanosoma congolenseを用いて、酵素活性の変化を調べ、予想どおりprocyclic formにもっとも高い活性が認められたのみならず、今まで活性がないと報告されている、哺乳動物内での血流trypomastigote formにも低いながら活性を認めた。まだうまくとれていないのが現状であるが、遺伝子クローニングを進めている。
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