研究課題
金属基繊維強化複合材料は、次世代の宇宙・航空材料として期待されているが、実用化に際しては、破壊・疲労などの損傷評価法の確立が重要と考えられる。本研究では、SiC繊維強化Ti合金に対して曲げ試験により段階的および繰り返し負荷を与えることによって損傷を導入させた試料について、共振法により弾性率、内部摩擦変化を測定するとともに、アコースティック・エミッション(AE)計測を行ない、発生した損傷との対応について検討した。試料には、SiC連続繊維(SCS-6)で一方向に強化したTi-6Al-4V合金を用いた。この複合材料パネル材(厚さ2mm、積層数8、繊維体積率35%)より、長さ75mm、幅4mmの試験片を切り出した。この試験片に対して、4点曲げによって、一定振幅の繰返し荷重を与えた。ある一定の繰返し荷重を負荷した後、曲げ共振法によりヤング率、内部摩擦を測定するとともに、負荷中に発生したAE信号を計測した。段階的および繰り返し負荷を与えたとき、ヤング率は破断直前でも、損傷を与える前と比較して、約2%程度の低下しか示さなかった。これに対して内部摩擦は負荷の開始と同時に上昇し始め、段階的な負荷では、破断荷重の90%で損傷を与える前の約1.7倍に、また、繰り返し負荷では、破断寿命の90%の繰り返し荷重を与えたときに、損傷を与える前の1.4倍にまで上昇した。AEは負荷の開始と同時に発生し始め、破断直前において急増した。負荷中の試料表面を観察した結果、繊維の剥離、破断等の損傷が観察され、内部摩擦の増加、AEの発生は、試料中の損傷発生と関連していることが知らされた。このことは、内部摩擦の変化あるいはAE計測によって、本複合材料の損傷状態の評価が行なえることを示唆している。
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