研究分担者 |
BERGSTROM S. スェーデン, ウメーオ大学・医学部, 教授
SIMON M.M. ドイツ, マックス・ブランク研究所, 教授
BARANTON G. フランス, パスツール研究所, 教授
KORENBERG E. ロシア, ガマレーヤ研究所, 教授
JOHNSON R.C. アメリカ, ミネソタ大学・医学部, 教授
中尾 稔 旭川医科大学, 医学部, 助手 (70155670)
宮本 健司 旭川医科大学, 医学部, 助教授 (30091581)
福長 将仁 福山大学, 薬学部, 教授 (20132483)
増澤 俊幸 静岡県立大学, 薬学部, 助手 (10181645)
SIMON Markus m Max-Planck Institute, Germany
KORENBERG Edward i Gamaleya Institute, Russia
JOHNSON Russell c University of Minnesota, U.S.A.
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研究概要 |
ライム病関連ボレリアはIxodes属マダニI.persulcatus,I.ovatusや患者、野生ゲッシ類動物、渡り鳥などから分離されている。ボレリアを保有する日本の主なベクターマダニはI.persulcatusとI.ovatusで、それぞれ、北日本、日本全国に棲息する。ボレリアは950kbの線状染色体と複数の環状、線状プラスミドを持つユニークな細菌である。以下に本研究の成果を挙げる。 1)日本、欧州、米国のボレリアのゲノムDNAを制限酵素EcoRVまたはHincIIで消化、23S rRNA遺伝子プローブNPまたはStyでハイブリダイゼーションを行い、そのRFLPパターンからI〜Xのリボタイプに分けた。 2)B.burgdorferi sensu stricto,B.afzelii,B.garinii,日本分離株の主要表層蛋白質OspCと鞭毛蛋白質遺伝子の塩基配列の比較研究からリボタイプII,IV〜VIはB.gariniiに帰属し、アジアに分布することを明らかにした。 3)日本のライム病起因ボレリアはB.garinii,B.afzeliiで主なベクターはI.persulcatusである。主な保有動物はApodemus speciosusであるが、渡り鳥Turdus chrysolaus,Emberiza spodocephalaのほかClethrionomys rufocanus bedfordiaeも深く関与することを明らかにした。 4)ライム病ボレリアにおいて分子量の変動の大きい主要表層蛋白質OspAに対する単クローン抗体を調製、その反応性より日本分離株を11 OspA血清型に分けた。一方、欧州分離株は7血清型に分けられ、Munchen大学Wilske教授と共同でOspA単クローン抗体16種を用い比較検討し、B.afzeliiのみが一致し、日本のライム病ボレリアが血清学的にも欧米株と異なることを明らかにした。 5)Korenberg教授、Volkov博士との共同研究でハバロフスク、ウラジオストク、ユジノサハリンスク周辺で採取したマダニI.persulcatus846匹、ゲッシ類Apodemus agrarius,A,peninsulae,Clethrionomys rufocanus,Tamias sibricus,Sorex sp.など約50頭からボレリアの検索を行い、マダニの225匹(26.6%)がボレリアを保有した。マダニ、野生ゲッシ類分離株の23S-5S rRNA遺伝子のRFLP(リボタイピング)、5S-23S rRNA遺伝子intergenic spaceのRFLP解析により、約80%がB.garinii,10%がB.afzelii,残りが両菌種の二重感染と未同定などで、B.burgdorferi sensu strictoは見いだされ無かった。この分布は日本国内でのライム病ボレリアの分布にほぼ一致し、ライム病が極東ロシアを経て日本に伝播するという我々の仮説に一つの証拠を提供した。 6)日本に広く分布するI.ovatusより分離されるB.japonicaの病原性については直接的証拠がなかった。Max-Planck研究所Simon教授との共同研究でSCID,C3H/HeN,ddYマウスに関節炎を誘発させ、前2者のマウスからは再分離に成功し、病原性の存在を示唆した。 7)I.tanukiやノネズミなどから分離したIt-Typeボレリアは広く日本に分布し蛋白質電気泳動像、単クローン抗体との反応性、OspA,OspB遺伝子のPCR増幅性、ゲノムDNAの相同性試験、並びに、16S rRNA遺伝子、23S-5S rRNA遺伝子、鞭毛蛋白遺伝子、5S-23S rRNA intergenic spacer ampliconのRFLP解析などから新種であることを明らかにした。また、C3H/HeNマウスに感染し関節炎を起すことを示した。 8)I.turdus,I.columnaeから分離したボレリアの分子生物学的性状はそれぞれ独特で新種であることが明らかになった。 9)I.persulcatus (hard tick由来)より分離した38kDa小型鞭毛蛋白質と1組の23S-5S rRNA遺伝子をもつボレリアは16S rRNA1368塩基の配列分析から、ライム病ボレリアよりも回帰熱ボレリア(soft tick由来)に近い新種でB.miyamotoiと命名した。 10)本共同研究の成果につき、Johnson教授、Baranton教授,Simon教授,Wilske教授(Munchen大学)、福長、増沢、柳原は1996年1月22、23日米国カリフォルニア州ベンチュラ市ホリデイインにおいて総括、評価の会議を行い、本共同研究が所期の目的を達成したことを確認した。
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