研究概要 |
1)Fibrinogen(Fbg)CaracasII:国外共同研究者の一人,Arocha-Pinango博士によって発見された本異常分子では,われわれの分析からAαSer-434→Asnという点変異,およびこれにより変異Asn残基そのものに二又アンテナ様オリゴ糖が付加されていること,またこの糖鎖末端のシアル酸に由る強い陰性荷電からフィブリン・プロトフィブリル間に強い反撥力が生じ,Fbnのゲル化が著しく遅延することが判明している(J.Biol.Chem.266:11575-11581,1991).本研究ではこの構造と機能異常の電顕学的分析を,Weisel博士(国外共同研究者)と共同して探索し,次の新知見を得た. 1)余剰糖鎖のもつ陰性荷電のためにAα鎖C末領域は中央のEドメインから反跳し,新たな小球状構造を形成していた.500余の分子を観察した結果,半数はこのような異常構造を呈し,残りの半数は正常分子の構造を保っていた.このことはダイマー構造をもつFbgが(正常-正常)あるいは(異常-異常)というhomodimerとしてのみ存在し,(正常-異常)というheterodimerとしては存在しないことを示している.また,フィブリンのスキャン電顕像では,フィブリン網状構築が不整でフィブリン束の太さもまちまちであり,大きな空洞状構造(pore)が散見された.また,フィブリン束は筆先状に急峻に太さを減じて(tapering)断裂していた. 2)Fbg Marburg I:ドイツで発見され,精製が困難な事から研究代表者が構造と機能解析を依頼されたものである.本異常分子はAα鎖C末150残基を欠失し,遊離SH基をもつAαCys-422の約30%にアルブミンが結合していた.興味あることは,フィブリンへの転化に際してこのアルブミンが活性XIII因子の基質となってフィブリンに架橋結合したことで,この所見は全く新しい知見である.線溶酵素プラスミンに対するアルブミンの抵抗性を考えると,この事実は患者で観察された反復性血栓塞栓症に結びつくものと考えられ,更に分析を進める予定である.
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