研究課題
1)今年度の海外調査では研究代表者はロンドンで敦煌漢簡を調査したほか、スイスBruggにおいてローマ木簡(ヴィンドネッサ出土)を精査し、同博物館の保存方法を調査した。吉村、鵜飼分担者及び門田、陳協力者は、主に江陵荊州博物館、武漢湖北省博物館、長沙湖南省博物館で出土漢簡の調査と研究者との討論を行った。2)招請研究者として北京大学張伝璽、裘錫圭、中国政法大学徐世虹、社会科学院世界歴史研究所徐建新は、それぞれ共同研究会に参加して釈文の検討を行った。又、下記の漢簡の展示の時期に来日した謝駿義、何双全等甘粛省研究所関係者は、共同研究会に出席するメンバーに対し、懸泉置漢簡発掘状況について説明、研究報告を行った。3)代表者大庭が館長を兼任する大阪府立近つ飛鳥博物館では10月4日より11月20日迄甘粛省文物考古研究所より懸泉置漢簡を含む漢代木簡約90点を借用、一般に展示したが、その間日本奏漢史研究会会員をはじめ多数の来館者があり、特定少数の研究者には、ケースを開いて観察できるようにし、一般の入館者の中では、特に書道関係者が大きな関心をよせた。研究と同時に一般的啓蒙にも役立ったが、特に漢簡の現物に接し得ない研究者には大きな貢献を果たしたと自負している。4)1989年以来与えられている科学研究費補助金(国際学術研究)の援助のもとに継続して作業を続けた、上島紳一分担者を中心に、吉村昌之、鵜飼昌男分担者、門田明協力者の作成した『居延漢簡索引』を刊行することができた。5)今年度末になり中国で『居延新簡』の写真版が刊行されたので、今後はこの写真版を利用して釈文の検討を行うことにしたい。