研究分担者 |
MORLE Laure Institut Pasteur de Lyon CNRS (URA 1171), Senior Sci
ALLOISIO Ni Institut Pasteur de Lyon CNRS (URA 1171), Senior Sci
DELAUNAY Je Institut Pasteur de Lyon CNRS (URA 1171), 教授
原野 恵子 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 助教授 (00069072)
原野 昭雄 川崎医科大学, 医学部, 助教授 (60069028)
岡本 直人 川崎医科大学, 医学部, 助手 (20204042)
井上 孝文 川崎医科大学, 医学部, 助手 (60203238)
和田 秀穂 川崎医科大学, 医学部, 講師 (70191830)
神崎 暁郎 川崎医科大学, 医学部, 講師 (40148698)
杉原 尚 川崎医科大学, 医学部, 講師 (60140505)
山田 治 川崎医科大学, 医学部, 助教授 (50104790)
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研究概要 |
平成6・7年度を通じて次の4大主題について共同研究、情報交換、相互討議を行い、次の如き成果が得られた(論文1-32:業績目録添付)。 1.わが国における遺伝性赤血球膜異常症の疫学頻度に関する研究: 自験353家系610例について、わが国の膜疾患の疫学を検索した結果、わが国では、疫学的に遺伝性球状赤血球(HS)が最多(50.5%)で、遺伝性楕円赤血球症(HE)がこれに次ぎ(16.1%)、遺伝性有口赤血球症(HSt)も9.3%とかなりの相対頻度であることが判明した。また、膜蛋白分析の精査によって初めて同定しうる疾患群(band4.2異常症など)の存在することは注目に価する。また、膜脂質異常症(hereditary high red cell membrane phosphatidylcholine hemolytic anemia (HPCHA)、congenital lecithin : cholesterol acyltransferase (LCAT) deficiency, familial β-lipoprotein (β-LP) deficiency, congenital α-LP deficiency)として全赤血球膜異常症の約6.4%を占めることが明らかとなった(論文3)。 2.遺伝性球状赤血球症(HS)の病態・病因解析: (1)疫学的特徴:蛋白生化学の立場から、本症のphenotypeの同定を行い、わが国のHSの特徴を解析した。その結果、諸外国では、本症の病因がankyrin単独またはankyrin (Ank)+spectrin (Sp)の複合異常が全症例の約2/3であり、band3 (B3)あるいはband4.2(B4.2)異常症が約1/3であるのに対して、わが国では、Ank/Sp系の異常は極めて稀で、むしろB3/B4.2異常が主体であることを明らかにした(論文5)。 (2)HSの病因解析:わが国のHSの病因として(i)band 3 Fukuoka家系(130GGA→AGA : homozygote)(論文24、30)、 (ii)band3 Okinawa家系(714GGG→GAG/130GGA→AGA:複合変異)(論文26)、(iii)band3 Hiroshima (band3/glycophorin Aの複合欠損症)(論文28)、(iv)band3完全
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欠損症(ウシ家系)(論文16、21)を同定し、さらに(v) ankyrin関連染色体欠失(8p-)を伴った本症(論文15)を報告した。本領域については、B3、B4.2、Ank関連の遺伝子異常について現在、鋭意、研究を継続中である。 3.わが国に特有なband4.2異常症の病因・病態の解明: (1)B4.2異常症の全体像:Biochim Biophys ActaとAm J Med SciのEditorial Boardの招請によりB4.2蛋白・遺伝子及びその病態について詳述した(論文1、2)。 (2)B4.2の病因解析:B4.2完全欠損症では、(i)B4.2Nippon Type (142GCT→ACT : homozygote)(論文6)、(ii)B4.2 Komatsu (175GAT→TAT : hemozygote) (論文13)、(iii)B4.2 Shiga (317CGC→TGC/142GCT→ACT :複合変異)(論文12)、B4.2variantとして、(iv)B4.2doublet Kobe(論文32)を同定した。 (3)B4.2異常症の病態研究:B4.2完全欠損症における膜間粒子(IMP)としてのB3、および細胞骨格蛋白網の病態を電顕学的および膜物性学的に検索し、B4.2がB3のみならず、Spにも結合していることを明らかにした(論文11、18、20、22)。 (4)赤血球膜形態形成(morphogenesis)におけるB4.2の役割:膜形態形成過程においては、まずSp、B3が発現し、次いでAnk、B4.1が、最後にB4.2が発現し、赤血球膜形成が完成することを見出した(論文9、17、22、23、27、31)。 4.Spectrin異常症としての遺伝性楕円赤血球症(HE) : (1)わが国におけるHEの疫学的特徴:膜蛋白生化学的検索により、α-Sp異常症は極めて稀(α^<1/74>異常症1家系のみ)(論文3)であるのに対して、β-Sp異常症は全世界8家系のうち、3家系を報告した。 (2)β-Spectrinの病因解析:β-Sp Tokyo(既報)、β-Sp Le Puy in Yamagata(論文4、7)、β-Sp Nagoya(論文19)を同定し、その分子病態を膜生化学的、電顕的、分子生物化学的に明らかにした。 (3)α-Spectrin gene polymorphism :日仏共同研究の一環として、α-Sp gene異常としてのallele α^<LELY>の頻度を日本人、仏白人、黒人、中国人について検索し、わが国ではその頻度は他民族とほど同様であった(論文14)。 B4.1完全欠損症(B4.1 Madrid)の分子病態:細胞骨格蛋白網を構成するB4.1の完全欠失状態においては、IMP(B3)と細胞骨格蛋白網の著しい異常が生じていることを膜生化学的、分子電子顕学的に明らかにした(論文29)。 以上、従来からの研究背景と日仏共同研究の成果によって、平成6・7年度において、わが国の赤血球膜異常症の特徴と明らかにしえたが、さらに平成8年度のおいても本国際学術研究共同研究として同一共同研究計画名の下に未解決の諸項目について検索を進める予定である。 隠す
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