研究課題
国際学術研究
本研究は、日本とスウェーデンの知的障害者の「生活の質」を調査し、その実態と課題を明らかにすることを目的として、3年計画で行われた。研究初年度は、文献研究と並行して、本調査の方法を確立するために予備調査を行った。研究2年目は、さらに2回の予備調査が行われ、調査方法と評価尺度の修正を行った。研究最終年は、日瑞両国の本調査の結果の分析と考察が行われた。本調査の有効対象者数は、日本側男40名女39名計79名、スウェーデン側男女各15名計30名であった。対象者は生活居住形態別(入所施設、親と同居、グループホーム、活)に選抜され、調査は面接法で行われた。調査では、修正カヤンディ式「生活の質」評価マニュアルを基にしたインタビュー・ガイドが用いられた。調査の結果、日本とスウェーデンの知的障害者の「生活の質」をめぐる実態には社会環境の違いによる多くの差異が見られていたが総じて次のような結果が示されていた。「入所施設」のような「本人の意思や主体性」が生かしにくい生活居住状態の下では「生活の質」の評価が全体的に低かった。また、「親と同居」や「グループホーム」居住者の生活の質は「自活」している人たちほど高くなく、個々の生活主者として尊重してほしいという要求を示していた。「自活」している人たちは、それなりの自由度や自己実現への歩みを示していたが、地域住民との関係がうまくとれずに孤独を感じている人たちもいた。「結婚している」人たちには「2人で支え合う関係」が安心感をもたらし、「生活の質」を高めていく上で欠かせない要素となっていた。また、スウェーデンでは入所施設が「閉鎖」されつつあり、「自活」者が増え、「豊かな居住環境」を保障されている実態も明らかにされた。しかし、社会的ノーマライゼーションが進んでいない実態も見られ、「豊かさの中の問題点(孤独等)や課題」も「生活の質」の評価を通して見られていた。
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