研究課題
HB-EGFは細胞膜貫通領域を持った膜結合型細胞増殖因子で、細胞間情報伝達と細胞接着を結びつける因子として注目される。我々はこれまでの研究から、HB-EGFに膜蛋白質DRAP27がアソシエ-トしていることを明らかにしている。そこで本研究では、HB-EGFの発見者であるKlagsbrun博士、東山繁樹博士らと共同で、1)Juxtacrine実験系の確立と、2)DRAP27のJuxtacrineにおける役割解析、3)HB-EGF-DRAP27とアソシエ-トする他の膜タンパク質の解析を行い、以下の結果を得た。(1)HB-EGFを発現した細胞とEGFファミリー増殖因子依存的に増殖するレシピエント細胞を共培養し、レシピエント細胞が細胞接着依存的に増殖するかどうかを調べたところ、増殖促進が認められた。この増殖促進活性は、HB-EGFの発現量に依存し抗HB-EGF抗体で中和されること、この活性はトランスウェルで両者の細胞を隔離すると認められなくなることから、HB-EGFのジャクスタクライン活性によるものであることが示された。(2)DRAP27のジャクスタクライン活性への影響を調べたところ、DRAP27はHB-EGFのジャクスタクライン活性を著しく上昇させた。(3)免疫沈降による共沈降、架橋試薬によるクロスリンク実験から、DRAP27にインテグリンα3β1がアソシエ-トしていることを明らかにした。さらに、インテグリンα3β1は、DRAP27を介してHB-EGFとアソシエ-トしていること、3者のコンプレックスが細胞間接着部位に局在していることがわかった。これらの結果は、HB-EGFが単に増殖因子として単独に存在するのではなく、細胞接着因子や細胞外マトリックス蛋白質を含んだ機能的複合体として存在し、細胞接着を介した細胞間相互作用に働いていることを示唆している。
すべて その他
すべて 文献書誌 (4件)