研究課題
HB-EGFはEGFファミリーに属する新しい膜結合型細胞増殖因子では、EGFリセプターに結合して細胞の増殖を促進するが、一方でまたジフテリア毒素のリセプターとなっているユニークな分子である。膜結合型細胞増殖因子は、細胞膜貫通領域を持った細胞増殖因子で、これらは液性の増殖因子の前駆動体となり得るばかりでなく、細胞膜に結合した状態で隣接した細胞に作用することから、細胞間情報伝達と細胞接着を結び付ける因子として注目される。我々はHB-EGFの発見者であるKlagsbrun博士、東山繁樹博士らと共同で、a)Juxtacrine実験系の確率と、b)DRAP27/CD9のJuxtacrineにおける役割解析、c)HB-EGF-DRAP27/CD9とアソシエ-する他の膜タンパク質の解析を行ってきた。今年度は、1)ジフテリア毒素あるいはその無毒性ミュータントがHB-EGFのEGFドメインに結合し、HB-EGFの細胞増殖活性を阻害すること、2)ジフテリア毒素は他のEGFファミリーの増殖因子には結合しないこと、3)HB-EGFのジフテリア毒素リセプターとして、あるいは膜結合型増殖因子としての作用に、ヘパリン様分子の関与が必要であること、4)TPA刺激によりHB-EGFの分泌型への急速な転換が引き起こされること、5)DRAP27/CD9はHB-EGFのジャクスタクライン活性を著しく上昇させること、6)DRAP27/CD9は分泌型HB-EGFの細胞増殖活性には関係しないこと、を明らかにした。以上の成果より、細胞は必要に応じてHB-EGFの膜型と分泌型を使い分けていること、膜型はヘパラン硫酸プロテオグリカン等の細胞外マトリックス蛋白質やDRAP27/CD9を含んだ機械的複合体として細胞間接着部位に存在し、細胞接着を介した細胞間相互作用に働いている可能性が示唆された。
すべて その他
すべて 文献書誌 (6件)