研究課題
国際学術研究
1.精密重力潮汐研究について以下の成果を得た。(1)昭和基地の超伝導重力計データ(1993年3月-1994年3月)の解析から日周潮・半日周潮帯域について14分潮のδファクターを求めた。求められた半日周潮のδファクターがDehant-Wahr理論予測より約10%大きいことが分かった。(2)同様のデータ解析(1993年3月-1995年1月)からMf、Mmなどの長周期潮汐10分潮についてもδファクターを求めた。海洋潮汐効果の補正は平衡潮モデル、Schwiderski、Dickman、Ma et al.、Desai&Wahrなど5つの全球潮汐モデルの場合について計算した。観測データに含まれる測定誤差20nGal、海洋潮汐補正誤差30nGalを考慮して求められるδファクターは、Mf、Mmともに1.169となり、日周潮帯域について求められた1.157と有意に異なることがわかった。(3)以上の解析結果はJournal of Geodetic Society of JapanにSato et al.で発表されたほか、アメリカ・ボールダーにおける第21回IUGG総会においても紹介された。また、Physics of the Earth and Planetary Interiorに投稿中である。2.南半球測地基準点網についての研究で以下の成果を得た。(1)昭和基地VLBIアンテナ基準点とSGAR・GPS基準点、DORIS基準点間でのITRF92座標比較を行った。(2)VLBIアンテナ基準点の地上取り付け精度が±25cmのため詳しい議論には限界があるが、DORIS解とVLBI解では最大12cm偏差内の一致が見られた。解析結果はKanao et al.(1995)により測地学会誌に掲載された。(3)SCAR92 GPSキャンペーンデータの解析をGAMIT+GLOBKプログラムにより行った。17地点、10日前データ、SIO暦による解析結果と上記(2)の結果とではX成分に説明できない大きな差(10m)があることが分かった。そのため、SCAR95 GPSキャンペーンデータを用いて比較解析を継続している。(4)昭和基地がIGS網に参加するためのGPSデータ伝送方法について見通しを得た。3.国際協同研究計画立案について以下の進展を見た。(1)オーストラリア地質調査機構と重力潮汐共同研究を開始した。1996年11月からモ-ソン基地において重力潮汐データの収録を行っている。(2)ドイツ主導のSGAR96 GPSキャンペーン(1996年1月-2月)に協力した。(3)南極VLBI実現に向けて、オーストラリア、ドイツ、南アフリカと実施プランを協議している。ShibuyaによるStatus ReportがProceedings of APT'95 Workshopoに掲載される。(4)南極全域(79°S以北)を覆う形でSARデータを取得するためのERS-1/-2によるTandem Missionを現在行っている。マクマ-ド基地、オヒギンズ基地、昭和基地での調和の取れた受信が決定的に重要であるが、本研究による協議により順調な経過を見ている。4.その他(1)昭和基地におけるSTS地震計観測データを用いたCrustal Receiver Functionの研究を行った。南極大陸内部を通る経路と海測定を通る経路での相違からS波地殻構造に異方性が見られることが分かった。解析結果はKanao et al.により、第21回IUGG総会において発表された。(2)しらせ船上三成分磁力計データを用いた南大洋地殻進化過程についての研究成果がNogi et al.により第21回IUGG総会において発表された。
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