X線天文衛星Astro-D,ROSATによるX線天体の研究

1996 年度 研究成果報告書概要

• 研究課題/領域番号: 06044225
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 共同研究
• 研究機関: 宇宙科学研究所
• 研究代表者: 井上 一 宇宙科学研究所, 宇宙圏研究系, 教授 (40092142)
• 研究分担者: FINK H. マックスプランク研究所, 研究員 ; FOGES W. マックスプランク研究所, 研究員 ; BRINKMANN W. マックスプランク研究所, 主任研究員 ; 田中 靖郎 マックスプランク研究所, 客員教授 (10022534) ; TRUEMPER J. マックスプランク研究所, 教授 ; 国枝 秀世 名古屋大, 理, 助教授 (00126856) ; 石田 学 宇宙科学研, 宇宙圏研究系, 助手 (20249931) ; 堂谷 忠靖 宇宙科学研, 宇宙圏研究系, 助手 (30211410) ; 高橋 忠幸 宇宙科学研, 宇宙圏研究系, 助教授 (50183851) ; 満田 和久 宇宙科学研, 宇宙圏研究系, 助教授 (80183961) ; 小川原 嘉明 宇宙科学研, 宇宙圏研究系, 教授 (80013671) ; 長瀬 文昭 宇宙科学研, 企画情報解析センター, 教授 (00022690)
• 研究期間 (年度): 1995 – 1996
• キーワード: X線天文学 / 科学衛星 / 同時観測 / X線スペクトル / 宇宙の高温ガス / X線天体 / evolution of the universe

研究概要

ドイツのMax Planck研究所(以下MPIと略)では、1990年6月に打ち上げられたX線天文衛星ROSATを観測運用中である一方、宇宙科学研究所では1993年2月わが国4番目のX線天文衛星「あすか」(Astro-D)を打ち上げ、順調に観測運用を行っている。ROSAT「あすか」も共に高感度のX線反射望遠鏡を搭載し、微弱なX線天文を抑えることが出来る。「あすか」のX線望遠鏡は3keV以上のX線に対し、1分角程度の解像力ながら衛星としては、初めて撮像能力をもち、かつ、これまでにない感度をもつ。また、世界で初めてX線CCDを搭載し精密な分光をする能力を有している。一方、ドイツのX線天文衛星ROSATに搭載されたX線望遠鏡は、2keV以上のX線に対する感度はないが、数秒角というすぐれた解像力をもつ。また、「あすか」には0.5keV以下のX線に対する感度はないがROSATは0.2keVほどのエネルギーの低いX線にも感度がある。このように、「あすか」とROSATは互いに相補的な能力をもっており、打ち上げ以降、両者が同じX線源を観測する同時観測が何回か組まれている。また、ROSATは打ち上げ後数カ月かけて全天のサーベイ観測を行っており、「あすか」の観測する方向のさまざまな情報を提供してくれている。本研究は、両衛星のデータの比較交換を行い、同時観測、X線天文の光学観測等で両衛星の研究者グループが協力するとともに、それぞれの衛星の特徴を生かした観測を行い、宇宙の進化・構造や、ブラックホール天体を始めとする各種X線天体の観測的研究を共同して行うことを目的として行われた。また、「あすか」・ROSATの観測時間は、世界の研究者の利用に供せられており、日独の研究者を中心に広く世界の研究者と共同研究を進めてきた。
平成6年度は、8月に国際天文連合総会、12月にテキサスシンポジウムという大きな国際研究会の場で、本国際学術研究の結果を含む研究発表を行うとともに、両者のデータ解析の結果を持ち寄っての打ち合わせを行った。特に、国際天文連合総会は世界の天文学者が一堂に集まりいくつかのシンポジウムが平行して開かれる大きな研究交流の場であり、わが国からも本研究の目的のために4名の研究者が参加した。
平成7年度は、9月にドイツで、3月には日本で、それぞれROSATの打ち上げ5周年と「あすか」の打ち上げ3周年を記念して大規模な国際研究会が開かれ、それぞれ300名近い世界各国の研究者が集まり、「あすか」・ROSATの観測データを中心に多数の研究発表が行われ熱心な討議がかわされた。ドイツでの国際研究会には本研究の目的で3名が参加した。また、3月の日本の国際研究会を利用して多数の日独の研究者が集まり、これまでの共同研究の総括と今後の進め方について活発な議論がかわされた。6月と2月にもそれぞれ1名ずつ訪独、訪米し「あすか」の観測打ち合わせを行った。一方、ドイツのマックスプランク研究所に客員研究員として滞在中の田中が、日独の研究連絡のため4月と3月に帰国、種々の打ち合わせを行った。
平成8年度は、4月に米国(1名)、7月に英国(1名)、8月に韓国(1名)、10月にイタリア(1名)で開かれた国際研究会において、「あすか」・ROSATの共同観測のデータをもとに発表を行った。また、7月には将来の共同研究の打ち合わせに2名が訪英、11月には、それぞれの検出器の相互の較正の打ち合わせに1名が訪独した。
この3年間の相互交流・学術研究により、「あすか」・ROSAT両衛星の検出器の応答関数の相互較正も進み、それぞれの観測装置の特徴を生かした興味ある観測結果が得られてきている。そして、宇宙の進化・構造や、種々のX線天体の理解が多いに進みつつあり、多くの論文となって実を結んでいる。本科学研究費補助金による研究は平成8年度で終わりとなるが、来年度以降日独の研究協力をさらに発展させて行くべく、全体の組織の整備や種々の研究テーマごとの作業グループつくりも進んでおり、今後の研究協力の発展が期待される。

研究成果

• [文献書誌] M.Cappi,T.Mihara,M.Matsuoka et al.: "Is the X-ray Spectrum of the Seyfert 2 Galaxy NGC 5252 Intrin-sically Flat?" Astrophys.J.456. 141-151 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Y.Ikebe,H,Ezawa,Y.Fukazawa et al.: "Discovery of a Hierarchical Distribution of Dark Matter in the Fornax Cluster of Galaxies" Matire. 379. 427-428 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] D.J.Macomb,C.W.Akerlof,H.D.Aller et al.: "Multiwavelength Observations of Marlaroam 421 During A Tev/X-ray Flare" Astrophys.J.Letters. 449. 99-103 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] J.Siebert,M.Matsuoka,W.Brinkmann et al.: "ASCA Observations of High Redshift Quasars" Astron.Astrophys.307. 8-14 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] S.Yamauchi,H.Kaneda,K.Koyama et al.: "Unresolved X °Ray Emission from the Galactic Ridge with ASCA" Publ.Astron.Soc.Japan. 48. L15-L20 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Y.Ishisaki,K.Makishima,N.Iyomoto et al.: "X-ray Properties of the Nucleus of M81" PASJ. 48. 237-248 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] K.Asai,T.Dotani,K.Mitsuda et al.: "ASCA Observations of Soft X-Ray Transients in Quiescence : X1608-52 and Cen X-4" PASJ. \^*. 257-263 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] K.Tamura,N.Kawai,A.Yoshida,and W.Brinkmann: "Evidence for a Pulsar Jet Producing a Hot Nebula in the Supernova Remnant MSH 15-52" PASJ. 48. L33-L36 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Y.Fukazawa,K.Makishima,K.Matsushita et al.: "Metal Abundance of an X-ray Emitting Gas in Two Groups of Galaxies" PASJ. 48. 395-407 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] K.Ebisawa,Y.Ueda,H.Inoue et al.: "ASCA Observations of the Iron Line Structure in Cygnus X-1" Astrophys.J.467. 419-434 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] T.Kotani,N.Kawai,M Matsuoka and W.Brinkmann: "Iron-Line Diagnostics of the Jets of SS 433" PASJ. 48. 619-629 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] K.Koyama,K.Hamaguchi,S.Ueno et al.: "Discovery of Hard X-rays from a Cluster of Protostars" PASJ. 48. 22-23 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] T.Takahashi,M.Tashiro,G.Madejski,et al.: "ASCA Observations of an X-ray/Tev Flare from the BL Lacertae Object Markarian 421" Astrophys.J.Letters. 470. L89-L92 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] S.W.Allen A.C.Fabian,Y.Tawara et al.: "ASCA and ROSAT Observations of Distant,Massive Cooling Flows" Mon.Not.Roy.Astron.Soc.283. 263-281 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] W.Brinkmann,N.Kawai,Y.Ogasaka et al.: "ASCA Observation of the Infrared Quasar IRAS 13349+2438" Astron.Astrophys. 319. L9-L12 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] M.Cappi, T.Mihara, M.Matsuoka et al.: "Is the X-ray Spectrum of the Seyfert 2 Galaxy NGC 5252 Intrinsically Flat?" Astrophys.J.456. 141-151 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Y.Ikebe, H.Ezawa, Y.Fukazawa et al.: "Discovery of a Hierarchical Distribution of Dark Matter in the Fornax Cluster of Galaxies" Nature. 379. 427-428 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] D.J.Macomb, C.W.Akerlof, H.D.Aller et al.: "Multiwavelength Observations of Markarian 421 During A Tev/X-ray Flare" Astrophys.J.Letters. 449. L99-L103 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] J.Siebert.M.Matsuoka, W.Brinkmann et al.: "ASCA Oabservations of High Redshift Quasars" Astron.Astrophys.307. 8-14 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] S.Yamauchi, H.Kaneda, K.Koyama, et al.: "Unresolved X ﾟRay Emission from the Galactic Ridge with ASCA" PASJ. 48. L15-L20 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Y Ishizaki, K.Makishima, N.Iyomoto, et al.: "X-Ray Properties of the Nucleus of M81" PASJ. 48. 237-248 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] K.Asai, T.Dotani, K.Mitsuda, et al.: "ASCA Observations of Soft X-Ray Transients in Quiescence : X1608-52 and Cen X-4" PASJ. 48. 257-263 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] K.Tanuma, N.Kawai, A.Yoshida and W.Brinkmann: "Evidence for a Pulsar Jet Producing a Hot Nebula in the Supernova Remnant MSH 15-52" PASJ. 48. L33-L36 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Y.Fukazawa, K.Makishima, K.Matsushita et al.: "Metal Abundance of an X-Ray Emitting Gas in Two Groups of Galaxies : The NGC 5044 Group and HCG 51" PASJ. 48. 395-407 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] K.Ebisawa, Y.Ueda, H.Inoue, et al.: "ASCA Observations of the Iron Line Structure in Gygnus X-1" Astrophys.J.467. 419-434 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] T.Kotani, N.Kawai, M.Matsuoka and W.Brinkmann: "Iron-Line Diagnostics of the Jets of SS 433" PASJ. 48. 619-629 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] K.Koyama, K.Hamaguchi, S.Ueno et al.: "Discovery of Hard X-rays from a Cluster of Protostars" PASJ. 48. L87-L92 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] T.Takahashi, M.Tashiro, G.Madejski, et al.: "ASCA Observation of an X-ray/Tev Flare from the BL Lacertae Object Markarian 421" Astrophys.J.Letters. 470. L89-L92 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] S.W.Allen, A.C.Fabian, Y.Tawara, et al.: "ASCA and ROSAT Observatopms of Distant, Massive Cooling Flows" Mon.Not.Roy.Astron.Soc.283. 263-281 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] W.Brinkmann, N.Kawai, Y.Ogawaka et al.: "ASCA Observation of the Infrared Quasar IRAS 13349+2438" Astron.Astrophys.316. L9-L12 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より