研究課題
宇宙活動を支える電力供給源として太陽電池は信頼性や実績ともたいへんに優れているが、需要電力の増大に対応するためには太陽電池パネルの大型化や発電された電力を高電圧/低損失にて送電する技術を開発する必要性がある。宇宙科学研究所は無人宇宙実験観測フリーフライヤーSFUに搭載する2次元展開高電圧ソーラーアレイ実験を開発した。これは特殊な折り方で畳み込まれた膜面を宇宙でXY2次元方向に展開し、そのうえに搭載された太陽電池にて最大260Vの高電圧光発電を行うことができる。宇宙科学研究所は共同実験者としてマサチュセッツ工科大学ヘイスティングス助教授(現教授)を招待し、双方で互いの研究機関に滞在して意見/情報交換を行いながら共同研究を進め当該宇宙実験機器の開発を行った。種子島宇宙センターからH-2ロケットにより平成7年3月に打ち上げられSFUは約1年間軌道運用され、平成8年1月にスペースシャトルにより地上回収、同年3月末に日本に輸入された。平成8年度は日本に再輸入された宇宙実験機器を本体より取り外し、個々機能の確認、分解、分析を行った。約1年間宇宙環境に曝された表面は予想外に変色しまた沢山の宇宙デブリの衝突痕を見ることができた。一方、2次元展開の機構は特段の変化はなく地上に帰還後もその機能を維持していた。太陽電池も破損は全く見い出されなかった。日米双方で宇宙飛翔データの分析を進め、2次元展開アレイの作動によると思われる衛星の振動を捕えることができた。これらの成果を国際シンポジュウムにて口頭発表し、また実験機器の回収を実施した米国NASAへ出向き報告した。日本として初めて開発する再使用型人工衛星SFUに搭載する高電圧ソーラーアレイ実験を日米の研究者の努力により達成できた意義は大きい。地理的時間的ギャップを乗り越えるために本国際学術研究は有効に機能することができた。
すべて その他
すべて 文献書誌 (9件)