研究課題/領域番号 |
06044232
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 岡崎国立共同研究機構 |
研究代表者 |
中村 宏樹 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 教授 (10010935)
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研究分担者 |
LEVINE R.D. ベブライ大学, 教授
岩田 末廣 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 教授 (20087505)
花崎 一郎 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 教授 (00028250)
伊藤 光男 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 所長 (20013469)
LEVINE Raphael D. The University of Jerusalem
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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キーワード | 化学反応動力学 / 光解離 / 波束動力学 / ポテンシャルエネルギー曲面 / フラクタル・ノイズ / 非断熱遷移 / 低温衝突 |
研究概要 |
2名のイスラエル人研究者の受入れと2名の日本人研究者の派遣を実施し、以下に述べる様な実績を上げる事が出来た。 論文を書く迄には至っていないが、研究は更に継続されいずれ論文としてまとめられる筈である。 以下、各人の共同研究毎にその内容・実績を説明する。 (1)原子・分子衝突過程の理論的研究(A.Ben-Reuven) 先ず、同教授の専門であるレーザー冷却された原子のレーザー場での衝突過程について東大・京大・分子研において講演を行った。 更に、分子研において中村グループによって開発された非断熱遷移の一般理論を上記諸問題に応用する事についての検討を行った。 特に、衝突粒子の励起状態が関与する共鳴状態による赤方変位の問題、2ケないし3ケのポテンシャル交差が関与する問題等についての適用性を議論した。 溶液内光解離反応の理論的研究(山下晃一) 溶液内で電子励起されたI_3-イオンの解離により生成するI_2が対称伸縮運動をコヒーレントにかなり長時間行っているというパンプープローグ実験の観測結果を理論的に解釈する試みを実施した。 Kosloff教授は波束動力学の計算を行ったが、I_3-イオンの解離ポテンシャルエネルギー面についての正しい情報がない為信頼出来る結果が得られなかった。 そこで、本共同研究では山下が電子状態の評価を担当した。 実験では、4.0eV近傍にピ-タ間隔0.8eVの2つの強い吸収帯が観測されており、先ずこれを再現する事から始めた。 CASSCF計算を実行する事により、励起状態としてI_2(^2Σ_u^+)+I(^2Π_<1/2>)につながる^1Σ_u状態とI_2^-(^2Π_g)+I(^2Π_<3/2>)につながる^1Π_u状態の可能性は否定され、^3Π_uと^1Σ_Qのスピン軌道相互作用から生じているΣ_u^+状態の可能性が高い事が判明した。 しかし、ピーク間隔の再現等にはまだ成功していない。 スピン軌道相互作用をちゃんと考慮に入れた分子軌道計算を行う必要があり、現在これを計画中である。 一方、共鳴散乱状態が多く存在する場合にも適用出来る波束伝播法を開発した。 任意のエネルギーの所の固有状態の評価を可能にする一般化時間発展オペレータ法を以前開発したが、共鳴状態を取扱える様にする為に、これに複素ポテンシャルに基づく境界条件を導入する事によって一般化を行った。 1次元モデル系でのテスト計算を終え、現在3次元系に適用出来るプログラムの開発を行っている。 (3)Terphenyl中のpentaceneの単一分子分光の理論(谷村吉隆) P-Terphenyl中に埋めこまれた単一pentaceneの超高分解分光にフラクタル・ノイズの様な興味ある特徴が見出されている。 Klafter教授はこれを確立過程としてとらえフラクタル・ノイズの観点から解釈しようとしている。一方、谷村はスピングラス系の熱浴に関する研究を行っており、ホスト結晶がこのモデルで記述出来ると考えている。 討議を行った結果、両者の知識と経験を交流してこの問題を研究する事が大変有意義である事で合意した。 先ず、モデルでpentaceneにフラクタル的揺動を生じるかを検討し、更にpentaceneの2準位系ダイナミックスをスピン・ボゾン系と比較しながら調べていく事が有効である事が判った。 今後、この共同研究を更に押し進めていく予定である。 (4)分子の電子状態の理論的研究(M : Naphcha) 分子研の岩田グループとの協力で下記の研究を実施した。 多原子分子の振動を伴いながら解離する過程を研究する方法開発し、応用する。 具体的に研究を進めるために、3原子分子CCHを取り上げて、その基底状態と励起状態の3変数ポテンシャルエネルギー曲面をMCSCF-MRCI(多原子配置SCP法-多参照CI法)により計算し、この曲面を再現する関数形を求め、解離過程を二つの方法で調べて近似の妥当性・適用範囲の検討を行った。
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