研究課題/領域番号 |
06044233
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 岡崎国立共同研究機構 |
研究代表者 |
村田 紀夫 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 教授 (90011569)
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研究分担者 |
SZALONTAI B ハンガリー科学アカデミー生物学研究センター, 主任研究員
HIDEG Eva ハンガリー科学アカデミー生物学研究センター, 主任研究員
GOMBOS Zolt ハンガリー科学アカデミー生物学研究センター, 主任研究員
奥山 英登志 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 助教授 (90125295)
林 秀則 愛媛大学, 理学部, 教授 (60124682)
SZALONMAI Balazs Biological Research Center Hungarian Academy of Sciences
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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キーワード | 遺伝子工学 / 低温ストレス / 高温ストレス / 熱ショックタンパク質 / 膜脂質 / 脂肪酸の不飽和化 / 光合成 / 形質転換 / Cyanobacterium |
研究概要 |
1.Dr.Gombosは1995年9月6日〜1995年12月1日(87日間)基礎生物学研究所に招へいされ、村田紀夫・林秀則と共同してラン藻Synechocystis sp.PCC 6803 の低温下における光化学系IIの光阻害をクロロフィル蛍光を指標として研究した。Synechocystis細胞を種々の長さの強光に曝し、その後の回復を調べたところ、低温光阻害には2つの成分が存在することが明らかとなった。第1の成分は従来から知られている可逆的な成分で、光阻害から約2時間で回復する性質を持っていた。この可逆的な成分は、光化学系II反応中心タンパク質複合体内のD1タンパク質の光存在下における代謝回転によって説明された。第2の成分は、従来あまり知られていなかった非可逆的な成分で、この成分は全く回復しないか、あるいは数日以上かかって回復する成分であることがわかった。この非可逆的成分に関わる過程は全く不明であるが、クロロフィルの分解のような葉緑体全体の破壊と関連しているように推定される。 光合成生物の生理学としては、強光下における光化学系複合体の非可逆的な破壊が深刻な意味を持つと思われる。逆に可逆的な失活は、強光条件から解放されれば回復するわけで、一時的に光合成能が低下するだけで深刻な意味を持たないと推察される。 奥山英登志は1995年7月14日〜7月29日(16日間)Biological Research Center に滞在し、Dr.GombosとDr.Szalontaiと共同して南極海産の藻類の好低温性と膜脂質の相転移に関する研究をおこなった。南極海産のハプト藻Prymnesiophyte strain B(以下B株)の生育温度域は10℃以下であり、低温環境に高度に適応していることがわかった。さらに低温適応の生理・生化学的側面を明らかにするため、B株の光合成活性の温度依存性とB株細胞全脂質の相転移温度を酸素電極法とFT-IR法によりそれぞれ測定した。比較のため、生育の至適温度が約25℃にある常温性の海産ハプト藻Isochrysis sp.も用いた。 5℃で培養したB株の光合成活性では、5℃で光合成の活性が最も高かった。一方、25℃で培養したIsochrysisにおいては光合成の最大活性は約30℃にあらわれた。Isochrysisの全脂質を用いたFT-IRの分析から、脂質の相転移温度は約17℃にあった。一方B株の全脂質では、相転移温度は5℃以下であった。 B株を25℃の暗黒条件下で3時間インキュベートすると光合成活性は完全に失われた。しかし、これを光で照射すると、光合成活性は再び回復した。この現象はIsochrysisではおこらなかった。この現象は光合成のdarkinhibitionともいうべきもので、本研究で初めて発見された。 3.村田紀夫は1996年3月10日〜3月30日(20日間)にBiological Research Centerを訪問し、Dr.Gombos、Dr.Hideg、Dr.Szalontaiと共同しえ熱ショックタンパク質の遺伝子を破壊したSynechococcus sp.PCC 7002の形質転換株の高温耐性能を研究した。その結果、groEL-β遺伝子を破壊すると、熱ショック処理後の生存率が低下することがわかった。一方ラン藻は高温環境において酸素発生の熱安定性を獲得するが、groEL-β遺伝子の破壊は酸素発生複合体の高温耐性には影響を及ぼさなかった。この事実から、ラン藻における熱ショック応答と高温への適応には異なった機構が作用していることがわかった。
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