研究分担者 |
キタ H. テネシー大学, 医学部, 教授
ステル W.K. カルガリー大学, 医学部, 教授
ウィルソン C.J. テネシー大学, 医学部, 教授
エリースマン M.H. カリフォルニア大学, サンディエゴ校, 教授
浅田 尚登 北海道教育大学, 教育学部・旭川分校, 助教授 (80159368)
葉原 芳昭 北海道大学, 獣医学部, 助教授 (30142813)
村上 富士夫 大阪大学, 基礎工学部, 教授 (20089882)
小坂 俊夫 九州大学, 医学部, 教授 (00126054)
大塚 輝彌 東邦大学, 理学部, 教授 (10051814)
有井 達夫 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助教授 (10109267)
小幡 邦彦 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 教授 (60013976)
STELL W.K Professor, University of Calgary, School of Medicine
ELLISMAN M.H Professor, University of California, San Diego, School of Medicine
ASADA N Assist, Professor, Hokkaido Education University
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研究概要 |
研究の目的: 哺乳類の中枢神経を構成する神経細胞及びグリア細胞は形態的にも機能的にも極めて多様であり、互いに相関しながら複雑な中枢神経機能を営んでいる。 本研究では光学顕微鏡、電子顕微鏡、及び超高圧電子顕微鏡的な手法を用い、中枢神経系各部位における神経細胞の化学的特性、形態学的特性をデジタル画像化し、定量化することによって電気生理学的な特性との対応を定量的に解明することを目的として、日米両国のこの分野の専門的研究者が相互に訪問研究、インターネットによる情報交換を行い、三次元の構造機能関連の解明のための研究を飛躍的に進歩させようとするものである。 研究成果: 濱、有井、エリスマン,M.H.グループ:このグループでは生理学研究所に設置されている100万ボルト超高圧電顕を用い、神経組織微細構造のコンピュータートモグラフィ解析を行った。有井、濱は厚い試料の低倍トモグラフィー解析の精度を上げるため、前磁場の弱い対物レンズの開発など、-60度から+60度迄、0.2度の精度を保ち、傾斜中心の移動なしに行うことができる試料台の開発を行い超高圧電顕トモグラフィー解析のための技術開発を行った。この研究技術は村上、ウイルソン,C.J.及び小坂グループの超高圧電顕研究にも活用して成果を挙げた。 エリスマン,M.H.のグループは厚い試料のトモグラフィー解析及びその連続積み上げのためのコンピューターソフトの開発及び同ソフトによる40万ボルト中高圧電顕による検討を行った。 試料としては^<1)>ゴルヂ染色、エポキシレジン包埋試料から2〜4μmの切片を作製し生理学研究所の超高圧電顕及び、サンディエゴの40万ボルト電顕により-60度から+60度に到る連続傾斜写真セットをつくり、エリスマングループが作製し、生理学研究所のコンピューターに転載されたトモグラフィーソフトにより、星状グリア細胞突起、及び神経細胞樹状突起の三次元定量解析、及び連続積み上げトモグラフィー解析を行った。^<2)>神経細胞突起内小胞体の免疫抗体染色を行った試料の超高圧及び中高圧電顕像を用いた連続積み上げトモグラフィー解析をエリスマングループが行った。これらのトモグラフィー解析の結果は、濱及びエリスマンがアメリカ顕微鏡学会1997年総会で発表予定である。このグループの研究協力者であるレブラム,V.及びゴンザレス,J.E.は新しい電位依存性色素
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を開発し生理的活動中のニューロンの機能形態解析を行う新しい方法の開発を行った。 村上、ウイルソン,C.J.グループ:両者の相互訪問により、小脳核から赤核への入力形成過程の解析を行った。生理学的特性を調べ、マーカー注入を行った新生ネコ及び成熟ネコの赤核細胞について、樹状突起上のフィロポディア状構造とシナプスの分布との関係を、連続切片法及び超高圧電顕トモグラフィー解析法を用いて検討した。新生ネコニューロンの樹状突起上にはシナプス形成の時期に一致して多数のフィロポディア及びラメリポディアが見られ、軸索終末との接触によって変形し、その1部は樹状突起スパインになる過程を観察することができた。トモグラフィー解析によって突起の定量的な変化を確かめることができた。 小坂、ウイルソン,C.J.グループ:海馬、嗅球を構成する多様なニューロン群について光学顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡、通常電子顕微鏡、及び超高圧電子顕微鏡を用いてその化学的性質及び三次元的な形態とニューロン相互間の関連の解析を行った。その結果、1)厚い免疫染色切片を使ったdisector解析法を確立し、海馬及び嗅球の脊腹方向でのGABA含有介在ニューロンの存在密度に明らかな差があることを見い出した。2)主ニューロンについてもカルシウム結合蛋白量、樹状突起スパイン数に脊腹方向に定量的な差があることを明らかにした。また細胞相互間結合様式にも脊腹の差があることが分かった。3)海馬、嗅球の介在ニューロンが免疫化学的に多くのグループに分かれることを三次元計量的に明らかにした。以上の結果から、従来一般に知られている嗅球回路モデルを大きく変更する必要があることを明らかにした。 共同研究者の大塚及び葉原はそれぞれ共焦点レーザー顕微鏡を用い、視色素の発生、外分泌時のカルシウム動態について新しい三次元定量的な結果を得た。 結語: 以上のように、この国際共同研究により、日米両国の共同研究者はそれぞれの特性をお互いに有効に利用しあって単独では実施不可能であった新たな研究を発展し、注目すべき成果を挙げることができた。特に超高圧電子顕微鏡による三次元トモグラフィー解析の分野ではハード面、及びコンピューター解析のソフト面での開発を進め、現在世界で最も信頼できる設備とすることができた。 現在、生物専用の超高圧電顕で高い性能を発揮できるものは、岡崎の100万ボルト電顕が唯一であると言ってよいので、今後この設備を用いた国際共同研究が盛んに行われることが期待される。 隠す
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