研究分担者 |
陳 集双 浙江農業大学, 生物技術研究所, 副教授
寿 森炎 浙江農業大学, 園芸系, 副教授
張 国平 浙江農業大学, 農学系, 副教授
郎 介金 浙江農業大学, 動物科学学院, 教授
徐 孟奎 浙江農業大学, 蚕学系, 教授
張 炳欣 浙江農業大学, 植物保護系, 教授
一前 宜正 宇都宮大学, 雑草科学研究センター, 教授 (50008067)
藤重 宜昭 宇都宮大学, 農学部, 講師 (40008016)
奥田 誠一 宇都宮大学, 農学部, 教授 (90091941)
松村 晋 宇都宮大学, 農学部, 教授 (20241854)
CHEN Jishuang Institute of Biotechnology, Zhejiang Agricultural University, Associate Professo
SHOU Senyan Department of Horticulture, Zhejiang Agricultural University, Associate Professo
ZHANG Guoping Department of Agronomy, Zhejiang Agricultural University, Associate Professor
LANG Jiejin Animal Science College, Zhejiang Agricultural University, Professor
XU Mengkui Department of Sericulture, Zhejiang Agricultural University, Professor
ZHANG Bingxing Department of Plant Protection, Zhejiang Agricultural University, Professor
MURAMATSU Susumu Faculty of Agriculture, Utsunomiya University, Professor
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研究概要 |
本研究は,平成6年度から8年度の3か年にわたり,文部省科学研究費補助金国際学術交流(大学間協力研究)の交付を受けて,宇都宮大学と中国浙江農業大学(浙江省杭州市)間で締結された,学術交流に関する大学間協定に基づき,実施したものである.予備的な検討をふまえて,両大学間で,相対応する領域の研究者を参加させることとし,作物学,雑草学,蔬菜学,畜産学,養蚕学および植物病理学の各分野について,「中国と日本における農業生産技術の比較研究」の課題を設定し,共同研究を行った.3年間で,日本からのべ9名の研究者と2名の研究協力者が訪中し中国からのべ10名の研究者が来日した.以下に各分野における主要な成果を記す. 1.浙江省は中国の中では最も先進的な農業地帯で,その技術水準も高い,その反面,工業の発展が著しく,農業の粗放化や農村の過疎化が進み,農業の兼業化,後継者不足等,日本の農業と類似した問題を抱えている.稲作については,浙江省では,自給率が低下した現在,多収が第一の目標,次いで省力,高品質と続いている.その点,日本における高品質,省力,多収の順序と逆になっている.中国において,多収栽培技術は品種改良によるところが大きく,特にハイブリッドライスの育成・普及が特徴的である.しかし,浙江省は二期作地帯のため,早生品種の育成に重点がおかれている.日本では,省力化は基本的に機械化を前提としているが,中国では今のところ機械化の実現は困難で,直播栽培などの省力化が図られている.今後,品種の多様性の解析と直播栽培技術の改善が共同で進めるべき課題として挙げられる. 2.水田雑草に関して,発生する種類,雑草群落の変遷,雑草防除法などが比較検討された.強害雑草の種類と主要除草剤は共通性が高く,雑草群落の変遷も似た傾向にあった.今後中国において進めるべき問題として,生態的防除,機械的防除と化学的防除を組み合わせた総合防除法の確立と,除草剤の適量使用による水田生態系の保全,除草剤以外の新しい雑草防除法の開発が挙げられた. 3.日中両国の動物生産については,日本,中国全体および浙江省に分けて,家畜の飼養頭数,畜産物の生産と消費の動向を比較調査した.さらに,現地調査によって,それらの生産技術の現状を把握し,日中相互の比較研究を試みた. 4.蔬菜の分野では,浙江省の主要産物の一つである蓮根,マコモ,ヒシ,ジュンサイ等水生蔬菜に焦点を当てて調査研究を行った.日本では,水生蔬菜はその生息環境を水質汚染で失う一方で,水田に入り集約的栽培と連作により自らが水質汚染の元と言われるに至っている.浙江省では,現在でも生態系調和型の農業と生活スタイルが存続しているようにうかがえるが,商品経済への急速な加速,都市の急激な膨張は,この持続を危うくする可能性を有している.生態系の保存と経営向上の調和を図るため,一層の協力研究が必要と考えられた. 5.日本と中国における養蚕業を比較すると,繭質や生産性の点で差が認められた.今後,稚蚕共同飼育を拡大し,適度の経営規模を維持し,繭質の向上を含めて技術水準を高め,養蚕経営の収益性を高める必要があり,日本の経験を生かした技術協力か特に寄与するところ大であると考えられた. 6.植物病理学の分野では,植物ウイルスおよびマイコプラズマに関する基礎的技術とその応用,土壌病害の生物的制御に重点を置いて調査研究を行った.共同研究のモデルとして,中国では採取したいくつかの病害について病原学的研究を行った結果,十分な成果を挙げることができ,想定される各種の問題について,共同研究を推進する意義が高いことが確認され,また十分な見通しを得ることができた. 7.成果の全体を「日本と中国における農業生産技術の比較研究」として一冊の報告書にとりまとめた.今後,両大学が姉妹校として,具体的にどのような分野でどのような協力が可能であるかについての数多くの示唆を得ることができた.
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