研究課題
本年度の研究計画の一つは、LEPの実験結果からより精密な理論的解析を進めていくことである。特に、Zボゾンの崩壊幅は宇宙の暗黒物質を形成する可能性の高い、中性で安定な粒子の存在を探る上で有用である。山田が現在研究している超弦理論に基づくE6超対称模型には、そのような粒子が含まれ、LEPの実験結果、従来の加速器実験を念頭においた研究で成果を得つつある。この模型は欧州原子核機構のEllis教授、Zwirner教授らも研究しており、山田は自らの研究について彼らと意見交換を行った。また藤川は、フェルミオンを含む系での指数定理の研究に伴って、無限個のベクトル相互作用する新たなフェルミオンを持つ理論を示唆し、質量の軽いものがLEP、LHC等で発現される可能性を指摘した。また他の研究計画として可解模型を通した場の理論の研究、特に一次元長距離相互作用を持つ模型、量子重力、行列模型についての詳しい解析がある。磯は一次元長距離相互作用を持つ模型等について共形場の理論の応用として、また分数統計系の立場から活発な研究を行い、本年度末現在、欧州原子核研究機構理論部において他の研究者と意見交換を行っている。量子重力、行列模型については、江口、Alvarez-Gaumeを中心に精力的な研究が行われている。特に江口が中心となって得たCPI等の行列模型についての成果は、平成7年度以降の研究計画に示した、量子重力理論を重点とした両研究機関の交流において重要な役割を果たすと期待される。また、ごく最近、N=2超対称ゲージ理論について重要な進展があり、両研究機関の多くの研究者が興味を持っている。そこでこの分野に詳しいLerche教授を招き、最新の研究成果について多くの議論をした。
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