素粒子の相互作用及び場の理論研究

1996 年度 研究成果報告書概要

• 研究課題/領域番号: 06045009
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 大学協力
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 藤川 和男 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (30013436)
• 研究分担者: VERLINDEV Er 欧州原子核研究機構, 理論部, 教授 ; ALVAREZーGAVM ゴーメ ルイス 欧州原子核研究機構, 理論部, 教授 ; VENEZIANO Ga 欧州原子核研究機構, 理論部, 主任教授 ; ELLIS John 欧州原子核研究機構, 理論部, 教授 ; 加藤 光裕 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (80185876) ; 筒井 泉 東京大学, 原子核研究所, 助教授 (10262106) ; 小川 格 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (90194430) ; 柳田 勉 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (10125677) ; 江口 徹 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (20151970) ; ALVAREZ-GAUME Lovis Theory Division, CERN,Professor ; VEREZIANA Gabriel Theory Division, CERN,Chairperson
• 研究期間 (年度): 1994 – 1996
• キーワード: 標準模型 / カイラル対称性 / 大統一模型 / 超対称性 / 共形不変性 / 弦理論 / 量子重力 / 陽子崩壊

研究概要

この研究計画の主たる目的は、自然の究極の構成要素を理解することと同時にそれらの構成要素を記述する理論物理学の枠組みを解明することである。この目的に向けて、本研究計画の代表者および分担者はそれぞれの研究協力者と共同で研究を進め、以下に記すような成果を挙げた。
藤川は、山田篤志助手と共同して、クオークとくにトップクオークのカイラルな構造を電子陽電子対消滅の実験データに基づき分析し、非常な精度で標準模型が示唆する左巻きの構造をしていることを明らかにした。また、藤川はこの結果に基づきクオークとレプトンのベクトル型の模型を考察した。さらに、場の理論一般に関する研究としては、一般化したPauli-Villarsの定式化と藤川が以前から提案してきた共変的な正則化の関連の研究を行い、量子異常の導出等に応用した。さらに、最近では、Gribovの問題と呼ばれているゲージ場の量子論に内在する問題とBRST対称性と呼ばれる対称性の関連を考察した。
山田は、素粒子論と宇宙論の境界領域において、アクシオンと呼ばれる粒子の役割についての考察を行い、一定の成果を得た。
江口は、共同研究者と共に4次元時空間における超対称性を持つゲージ理論の基本的な構造を解明した。特に、Yang-Mills場自身および物質場を含む理論における共形不変性に関係した性質の明快な分析を行った。また、ゲージ場の真空の正確な記述とソリトン理論の関連を明らかにした。さらには、3とか5次元時空間における場の理論を超弦理論の成果を取り入れる形で分析した。超弦理論そのものおよび量子重力理論に関する基本的な考察も行ない、特に位相的な場の理論に基づき弦理論の力学にあまり依存しない一般的な性質を解明した。
研究協力者の菅原は、超弦理論に現れる一種のソリトン解であるD-braneとよばれるものの役割について考察し新しい知見を得た。
柳田は、研究協力者の井沢等と共同で超対称性をもつモデルの現象論について研究した。近年、超対称性を持つ理論についての研究が進み、superpotentialの厳密な形が計算できるようになった。この知識を超対称大統一理論に適用し、標準理論に必要とされている軽いHiggs doubletがパラメータの微調整なしに自然に得られるモデルを作り、陽子崩壊が現在の観測からの制限に抵触しない程度に抑制されることを示した。超対称理論における双対性を使い、様々なモデルを包括的に調べた結果、観測と矛盾しないものは、上記の構成においては少数のモデルに限られることがわかった。SO(10)大統一理論についても研究を行い、同様に自然に軽いHiggs doubletが出てくるモデルを構成することに成功した。
また、超対称(大統一)模型における、陽子崩壊とレプトンフレーバーの破れについての研究を行った。最も単純な超対称SU(5)大統一模型は、現在の陽子崩壊の実験から非常に制限をうけていて将来のsuperKAMIOKANDE実験によってこの模型の決定的な検証がなされ得ることが分かった。右巻きニュートリノを含む超対称標準模型や最も単純な超対称SU(5)大統一模型では、μ→eνなどのレプトンフレーバーを破る現象が起こり、それが将来の実験で観測される可能性があることも分かった。
さらに、超対称性の自発的な破れについての研究も行った。今まで用いられていなかったゲージ一重項の場を使うことにより、比較的複雑なカイラル理論に頼らずに、ベクトル的なゲージ理論で超対称性が動的に破れるものを構成した。また、一重項が内在するおかげで、超重力理論と組み合わせた時、宇宙論的な問題を含め、実験観測と全く矛盾しないモデルが自然に得られることを示した。
なお、CERNからの訪問者は非常に有益な情報をもたらしてくれたし、また東大からのCERNへの訪問者は大きな学問的な刺激を受けたことも特記したい。

研究成果

• [文献書誌] 藤川和男: "Test of the chiral structure of the top-bottom charged current by the process b→sr" Physical Review. D49. 5890-5893 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 藤川和男: "A vector-like extension of the standard model" Progress of Theoretical Physics. 92. 1149-1160 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 藤川和男: "Snalytic index and chiral fermions" Indian Journal of Physics. 70A. 275-291 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 藤川和男: "BRST symmetric formulation of a theory with Gribov-type copies" Nuclear Physics. B468. 355-379 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 江口 徹: "Toda latlice hierarchy and the topological description of the C=1 string theory" Physics Letters. B331. 330-334 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 江口 徹: "On the genus expansion of the topological string theory" Review of mathematical Physics. 3. 279-309 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 江口 徹: "Prepotentials in supersymmetric gauge theories and soliton equations" Modern Physics Letters. A11. 131-138 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 江口 徹: "Study of N=2 super conformal field theories in 4-dimensions" Nuclear Physics. B471. 430-442 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 江口 徹: "Gravitational quantum cohomology" To appear in Intermational Journal in modern physics A. (1997)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 久野純治: "Limit on the color-triplet Higgs mass in the mininum supersymmetric SU(5) model" Modern Physics Letters. A10. 2267-2278 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 久野純治: "Lepton-flavor violation in the supersymmetric standard model with see-sow induced neutrino masses" Physics Letters. B357. 579-587 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 井沢健一: "Dynamical supersymmetry breaking in vector-like gauge theories" Progress of Theoretical Physics. 95. 829-830 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 堀田智洋: "Dynamical models for light Higgs dovblets in supersymmetric grand unified theories" Physical Review. D53. 3913-3919 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 堀田智洋: "Non-sbelian duality and Higgs multiplets in supersymmetric grand unified theories" Progress of Theoretical Physics. 95. 949-962 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] K.Fujikawa: "Test of the chiral structure of the top-bottom charged current by the process b*S2" Physical Review. D49. 5890-5893 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] K.Fujikawa: "A vector-like extension of the standard model" Progress of Theoretical Physics. 92. 1149-1160 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] K.Fujikawa: "Analitic index and chiral fermions" Indian Journal of Physics. 70A. 275-291 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] K.Fujikawa: "BRST symmetric formulation of a theory with Gribov-type copies" Nuclear Physics. B468. 355-379 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] T.Eguchi: "Toda lattice hierarchy and the topological description of the c=1 string theory" Physics Letters. B331. 330-334 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] T.Eguchi: "On the genus expansion of the topological string theory" Review of Mathematical Physics. 3. 279-309 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] T.Eguchi: "Prepotentials in supersymmetric gauge theories and soliton equations" Modern Physics Letters. A11. 131-138 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] T.Eguchi: "Study of N=2 super conformal field theories in 4-dimensions" Nuclear Physics. B471. 430-442 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] T.Eguchi: "Gravitational quantum cohomology To appear in" International Journal in Modern Physics A. (1997)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] J.Hisano: "Limit on the color-triplet Higgs mass in the minimum supersymmetric SU (5) model" Modern Physics Letters. A10. 2267-2278 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] J.Hisano: "Lepton-flavor violation in the supersymmetric standard model with see saw induced neutrine masses" Physics Letters. B357. 579-587 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] K.Izawa: "Dynamical supersymmeticy breaking in vecter-like gauge theories" Progress of Theoretical Physics. 95. 829-830 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] T.Hotta: "Dynamical models for light Higgs doublets in supersymmetric grand unified theories" Physical Review. D53. 3913-3919 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] T.Hotta: "Non-Abelian duality and Higgs multiplets in supersymmetric grand unifild theories" Progress of Theoretical Physics. 95. 949-962 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より