研究分担者 |
宗行 英朗 東京工業大学, 資源化学研究所, 助手 (80219865)
MONTAL Mauri Dept. of Chemistry, Univ. of California・S, 教授
福森 義宏 東京工業大学, 生命理工学部, 助教授 (60135655)
ALLISON Will Dept. of Chemistry, Univ. of California・Sa, 教授
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研究概要 |
ATP合成酵素には,全部で6ヶ所のヌクレオチド結合部位がある。そのうちの3ヶ所は,βサブユニット上にあり,ここでATPの水解あるいは合成が行われる。残りの3ヶ所は非触媒的ヌクレオチド結合部位と呼ばれ,αサブユニット上に存在し,その機能は今まで明確にとらえられなかった。今年度は,この非触媒部位の役割について研究を行った。吉田らは,まずαサブユニットのD261をNに変異した酵素を作製した。Allisonらはこの酵素は,非触媒部位のヌクレオチド結合能を障害することはなかったが,触媒部位に蓄積してくるADPを解離させることができないことを明らかにした。次に,αサブユニットのヌクレオチド結合に関与する4つの残基を全てAに変えた変異体を作製した。吉田はこれを持参してAllisonの研究室に出向き,この変異酵素は,非触媒部位にヌクレオチドを結合する能力を完全に失っていること,この酵素の活性は,反応開始後すみやかに失われてゆくことを見出した。これは,触媒部位にADPが蓄積してくることにより,ATPase活性が失われてゆくものと思われる。本来ならば非触媒部位にATPが結合することにより,触媒部位のADPが追い出されるのであるが,非触媒部位のヌクレオチド結合能が失われているために,酵素はそのまま活性を失ってゆくのである。このように,非触媒部位の意義が始めて明確に示された。次に,非触媒部位に,βサブユニットの触媒部位にある触媒残基のEを相当の位置に入れてみた。すると,非触媒部位はなにがしかの触媒活性を示した。こうして触媒部位と非触媒部位の入れかえが部分的に成功した。
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