研究課題/領域番号 |
06045020
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 大学協力 |
研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
岡田 慶夫 滋賀医科大学, 医学部, 学長 (10106825)
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研究分担者 |
楊 明燕 吉林医学院, 講師
趙 淑文 吉林医学院, 講師
深野 美也 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (50252383)
藤山 佳秀 滋賀医科大学, 医学部, 助教授 (70111896)
馬場 忠雄 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (40079819)
戸田 昇 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (50025590)
YANG Mingyan Assistant Professor, Jilin Medical College
ZHAO Shuwen Assistant Professor, Jilin Medical College
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研究期間 (年度) |
1994
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キーワード | TTLS / 血管弛緩 / 腸間膜動脈 / 内皮機能 / HCV / HCV-RNA / DNAプローブ法 / RT-PCR法 |
研究概要 |
1.胃および小腸への血流は、消化機能や消化管運動に重要な影響を与え、その増加は粘液産生を促すことにより、消化性潰瘍に対する防御因子の一つに挙げられている。趙淑文氏は、中国において狭心症や高血圧症などの循環器疾患に臨床応用されている漢方薬の摘出冠および腸間膜動脈におよぼす効果を検討し、その血管拡張作用機序を戸田昇氏と薬理学的に検討した。蕀藜主草より抽出されたTribulus terrestis L Saponin(TTLS)はステロイド環を有するサポニンの一種であり、中国において降圧および抗動脈硬化作用が報告され、血管に対する直接作用が示唆されると共にβ遮断薬との効能比較が注目されている。TTLSは15〜150μg/mlの範囲で、摘出イヌおよび日本ザルより摘出した腸間膜動脈および冠動脈を用量依存性に弛緩した。弛緩作用の程度はイヌよりもサルの方が大であった。前収縮薬としてプロスタグランディンF2αなどの受容体作動薬を用いた場合よりも塩化カリウムを用いたときの方がTTLSによる弛緩は強かったため、カルシウム拮抗薬様の作用が示唆された。TTLSによる血管弛緩反応は内皮除去標本でも観察され、内皮正常血管で観察される反応との間に定量的な差はなかったため、血管平滑筋に対する直接作用と考えられた。同弛緩作用は、timolol、indomethacin、N^G-nitro-L-arginineを処置してもまったく影響がないため、アドレナリンβ受容体および内因性プロスタグランジンや一酸化窒素を介するとは考えられない。また、TTLSを前処理してもβ作動薬による弛緩を抑制しなかったため、この薬物にβ遮断効果はないと考えられる。交感神経刺激による血管収縮作用に対して抑制する傾向がみられたが、神経伝達物質の遊離抑制なのかその平滑筋作用を抑制しているのかは今後の検討課題である。 以上のことから、冠動脈拡張作用を有し、虚血性心疾患に用いられている蕀藜主草の主成分であるTTLSは、同程度に腸間膜動脈を直接弛緩することが明らかになった。弛緩作用は霊長類で強く、その機序は単一では説明できないが、β遮断薬とは明らかに異なると考えられた。消化管平滑筋に対する作用と併せて検討することにより、消化器作用薬になる可能性が明らかにされるであろう。 2.RT-PCR法により慢性C型肝炎患者血清中のHCV-RNA測定は可能となってきている。しかしながらその方法の煩雑さ、再現性、及びコスト高が問題となっており未だ日常臨床検査に使用するには難しい状況にある。これに対して最近合成分枝DNAを使用し、シグナルを増幅し化学発光を検出系に用いた分枝DNAプローブ法が開発され血清中のHCV-RNA測定が可能となってきた。血清中のHCV-RNA量とIFN療法の治療効果の関係はある程度明らかになってきているが、肝組織中のHCV-RNA量との比較検討の報告は少なく、DNAプローブ法を用いた検討はほとんどない。本研究の目的はDNAプローブ法を用いてC型慢性肝炎患者血清及び肝組織中のHCV-RNAの測定を行い、RT-PCR法と比較し、さらにIFN治療における肝組織中HCV-RNA測定の意義について中国と日本を比較検討する基礎的検討である。組織学的に慢性活動性肝炎と診断された患者20名(男性17名女性3名)から得られた血清及び肝生検組織を用い、AGPC法を用いてRNA抽出を行いそれぞれDNAプローブ法、RT-PCR法により測定した。[DNAプローブ法によるHCV-RNAの測定]血清中のHCV-RNA;7.93±15.4Meq/ml,肝組織HCV-RNA;5.05±7.73Meq/ml,[RT-PCR法によるHCV-RNAの測定]血清中のHCV-RNA104.68±1.72copy/50μl,肝組織中のHCV-RNA;103.92±1.85copy/50μl.DNAプローブ法とRT-PCR法との相関:DNAプローブ法は従来のRT-PCR法における102.5COPY/50μl以上で血清、組織中ともに良好な相関を認めた。HCVはHBVに比べ血清中のウイルス量が非常に少ないためRT-PCR法が唯一の方法であった。しかし操作の煩雑さ、コンタミネーションの影響による結果の信頼性などに問題がある。DNAプローブ法はRT-PCR法との比較において比較的良好な相関が血清及び組織ともに得られた。組織中よりAGPC法によりHCV-RNAを抽出し、DNAプローブ法にて測定する本法は臨床応用が可能と考えられた。今後は肝組織中HCV-RNA量とIFN治療効果との関係に興味が持たれ、中国においても今後同様の検討が実施され日本と比較対照されることが期待される。
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