研究課題
平成8年度は、サセックス大学から研究分担者1名を招へいし、京都大学から研究代表者を派遣して共同研究を行なった。本年度の当初の目的であった2原子力施設従業員の子供の白血病増加の調査、および1ヒト培養細胞を用いた電磁場の影響の研究、の2点について、ほぼ目的目的通りの研究が達成できた。(1)白血病について:サセックス大学のブリッジェス教授(研究分担者)はイギリスの調査委員会の委員長であり、本年度に報告書を発表した。本研究では、報告書の提供を受けるとともに、ブリッジェス教授を招へいして、約5年間の調査経過について詳細な説明を受けた。子供の白血病多発は放射線によるとは考えられないとの結論は理解できたが、他に原因と考えられるものがみつからなかった点に、白血病の分子レベルの研究などの不足が指摘され、今後の分子疫学(特定の原因による遺伝子変化の分子レベルの検索)の重要性が認識された。研究代表者はサセックス大学を訪問して、これまで2年間にわたって共同研究してきた色素性乾皮症(XP)A群患者の分子疫学について、最終的な検討を行なった(主にレ-マン教授と)。またサセックス大学が開発したDNAの放射線損傷検出法であるコメツト法について、これまでに受けた技術指導のより詳細な諸点の教示を受けた。実験技術の詳細については、本研究とは別の計画で短期間留学中の学生(研究代表者の研究室で半年前から研究に参加)1名が修得中であり、帰国後の京都大学における研究に広く利用する予定である。(2)電磁場の生体影響について:研究代表者と分担者(宮越、巽)が多くの研究成果を挙げているが、その詳細についてサセックス大学に説明し、DNA修復の関与を中心にサセックス大学側の全研究分担者と討議を行ない、今後の研究に多くの助言と示唆を得た。
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