研究分担者 |
JORGE Solare サンカルロス大学, 民族間問題研究所, 所長(教授)
YVONNE Somme サンカルロス大学, 細菌学研究所, 研究員
MIGUEL Torre サンカルロス大学, 細菌学研究所, 所長(教授)
RUBEN Gonzal サンカルロス大学, 調査研究部, 副部長
ELBA Villato サンカルロス大学, 民俗学研究所, 主任
TORRES Miguel San Carlos University, Guatemala
SOMMERKAMP Yvonne San Carlos University, Guatemala
VILLATORO Elba San Carlos University, Guatemala
GONZALEZ Ruben San Carlos University, Guatemala
SOLARES Jorge San Carlos University, Guatemala
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研究概要 |
平成6年度文部省科学研究費補助金(国際学術研究-大学間協力研究)の交付を受け、和歌山大学とグアテマラ、サンカルロス大学の研究家6名からなる研究組織を組織し、「日本とグアテマラにおける伝統医学に関する比較調査」の研究課題による共同研究を行った。 グアテマラでは先住民が人口の80%を占め、19,623の集落がある。これらの集落のほとんどは、伝統文化から西欧文化へと急速な文化変容過程にある。医療システムにおいても同様に伝統医学から西洋医学への移行過程にある。一方、日本においては高度に近代化、機能分化が進んだ結果、今逆に伝統医学の特徴である包括的な視点にたった医学やソーシャルサポート・システムが見直されつつある。両国の研究者が、グアテマラの先住民集落において、疾病概念や伝統的治療者、そして精神障害者の実態調査並びに日本の農村でいかに保健制度が機能しているのかを共同調査し、近代医学にいかに伝統医学を組み入れるべきかを明らかにすることを今回の目的として本研究を開始した。 1。調査はまず、平成6年8月19日より9月17日(移動日を含む)にかけて、グアテマラ共和国マヤ系キチェ族の3集落にて、 1)村の保健活動員から現行の医療システムを聞き取り聴取した。 2)24名の呪術師にインタビューし、疾病概念や治療方法を調査した。 3)精神分裂病や文化結合症候群といわれるススト患者等の精神障害者の実態調査を実施した。 その結果は、伝統医学から西欧医学への移行過程で、疾病概念ならびに伝統的治療者の役割に急激な変化がみられ伝統的なソーシャルサポート・システムが崩れススト、自殺者、そしてアルコール中毒者の増加していること、そして母子保健上においてもさまざまにな問題が生じていることを示し、伝統医学の再評価の必要性が考えられた。 また、グアテマラ郊外のサンタ・エレナ村(人口約3000名)で、幻覚キノコ乱用者の実態調査を行った。ハラタケ科Psilocybe属 Psilocybe mexicana, P.cubensis、Panaeoius cyanescensなど15種類の毒キノコを確認すると共に,男子児童の約7割に幻覚キノコの乱用歴と一過性の幻覚体験を認めたので、乱用にいたる動機、使用方法、幻覚体験、そして家族や村人の対応振りを調査分析した。さらに現実逃避傾向の強い青年層でアルコール等他剤との併用により事故が多発し社会問題となりつつあることが明らかになった。 II、平成6年10月31日により、11月13日(移動日を含む)にかけて、和歌山県日高郡の農村美山村を調査地として、母子や精神保健制度ならびに民間療法者の関与状況等の調査をした。 これらの調査結果をもとに、平成6年11月11日、和歌山大学において、 1)キチェ族イシル地方におけるコマドロナ(伝統的助産婦)とその小児産婦人科的技術(E.ヴィジャトロ)、 2)伝統医学から西欧医学へ(ルベン・ゴンサレス) 3)日本とグアテマラにおけるfolk-healerが精神科医療に果たす役割(宮西照夫)、 4)グアテマラの食用キノコと毒キノコ(イボンヌ・ソンメルカンポ) 5)メソアメリカの魔術的そして幻覚剤を使用した伝統医学(ミゲル・トレス)、 6)幻覚キノコの有用性と危険性(宮西照夫)、 の内容で相互の調査研究結果の報告、及び分析検討を行った。 また、その内容はスペイン語による報告書La Medicina Tradicional Maya、Wakayama University、1995にまとめた。さらに第15回日本社会精神医学会に於いて、グアテマラ共和国インディヘナ集落におけるスストの調査及びグアテマラ市周辺の-集落における児童の幻覚キノコ乱用に関する実態調査と題して報告した。 本研究は、本年3月でもって終了するが、当初の目的は一応果たせたと考える。しかし、研究課題名を"幻覚キノコの臨床及び脳波学的研究"とした平成7年度国際学術研究-大学間協力研究が採択され、我々はさらに調査を進めたいと考えている。
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