有用動植物の実態と利用に関する共同研究

1996 年度 研究成果報告書概要

• 研究課題/領域番号: 06045045
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 大学協力
• 研究機関: 鹿児島大学
• 研究代表者: 橋口 勉 鹿児島大学, 農学部, 教授 (80041614)
• 研究分担者: 和 立青 雲南農業大学, 講師 ; る 昭芬 雲南農業大学, 副教授 ; りょ 天余 雲南農業大学, 教授 ; 佐藤 宗治 鹿児島大学, 農学部, 助教授 (20154106) ; 冨永 茂人 鹿児島大学, 農学部, 助教授 (90164029) ; 衛藤 威臣 鹿児島大学, 農学部, 教授 (10041659) ; 萬田 正治 鹿児島大学, 農学部, 教授 (70048106) ; HE Li Qing Lecturer, Yunnan Arr.Univ. ; LU Shao Fen Assoc.Prof., Yunnan Agr.Univ. ; LIU Tian Yu Prof., Yunnan Agr.Univ.
• 研究期間 (年度): 1994 – 1996
• キーワード: 雲南省 / 有用動植物 / 固有種

研究概要

平成8年9月5日から9月14日まで、鹿児島大学の橋口勉(家畜育種学)、衛藤威臣(蔬菜園芸学)、冨永茂人(果樹園芸学)、佐藤宗治(植物育種学)が中国・雲南省に派遣されて、雲南農業大学の研究者と雲南省の有用動植物の実態と利用について共同調査した。雲南省では水稲、ソルガム、タバコが主要作物であったが、特有の食用作物も多く見られた。また、薬用を兼ねた作物も見られた。例えば、ドクダミの近縁種と思われる魚腥草は、現地では漢方薬として利用されるほか、健康によい野菜として食されている。その他、Araceaeに属する植物で、若い花軸を食する野菜、更に、キノコ類など固有種と思われる植物が多数見られた。
雲南は亜熱帯に属しながら、高山を有するために、種の分化が甚だしく、特に植物分野で希少有用植物が多数存在する。有用植物の中でも果樹に希少植物が多い。これらは、将来、世界的にも重要な果樹遺伝資源となるであろう。調査によれば、雲南に分布する希少果樹(固有種を含む)には、次のようなものがある。
バラ科(Rosaceae)
ナシ属(Pyrus)*川梨(P.pashia)*〓梨(P.pseudopashia)*砂梨(P.pyrijoliaこの種の1品種宝珠梨はその甘さと水みずしさから、皇帝への献上品であった。)*徳欽梨(P.sp.)
リンゴ属(Malus)*麗江山荊子(M.rockii)*錫金海棠(M.sikkimennsis)*雲南海棠(M.yunnanensis)*滄江海棠(M.ombrophila)*湖北海棠*(M.hupehensis)*海棠(M.halliana)*西府海棠(M.micromalus)
サクラ属(Prunus;中国では桃属Amygdalusなどに細分類しているが、旧分類でもある);桃属(Amygdalus)*光核桃(蔵桃A.mira)*冲天桃(A.ssp.);杏属(Armeniaca)*蔵杏(A.holosericea);桜桃属(Cerasus)*C.pilosiuscula*C.pseudocerasus
サンザシ属(Crataegus)*中甸山〓(C.chungtienensis)*雲南山〓(C.scabrifolia)
クサボケ属(Chaenomeles)*毛叶木瓜(C.cathayensis)*西蔵木瓜(C.tibetica)
〓〓属(Docyia)*雲南〓〓(D.delavayi )*〓〓(D.indica)
牛筋条属(Dichotomanthes)*牛筋木(D.tristaniaecarpa)
樹梅属(Rulaus) 10余種
トキワサンザシ属(Pyracantha)*火把果(P.jortuneana)
ブドウ科(Vitaceae)
ブドウ属(Vitis)*毛叶葡萄(V.lanata)*〓〓葡萄(V.thunbergii)*葛〓(V.flexuosa)
マタタビ科(Actinidiaceae)
マタタビ属(Actinidia)*狗棗〓猴桃(A.kolomikta)*貢山〓猴桃(A.kungshanensis)
クロウメモドキ科(Rhamnaceae)
ナツメ属(Zizyphus)*山棗(Z.montana)*毛叶棗(Z.mauritiana)
カキノキ科(Ebenaceae)
カキノキ属(Diospyros)*油柿(D.oleifera)*小叶柿(D.mollufolia)
ヤマモモ科(Myricaceae)
ヤマモモ属(Myrica)*毛楊梅(M.esculenta)*矮楊梅(M.nana)
クワ科(Moraceae)
クワ属(Morus)*鶏桑(M.australis)*蒙古桑(M.mongolica)
イチジク属(Ficus)*地石榴(F.tikoua)
クルミ科(Juglandaceae)
クルミ属(Juglans)*野胡桃(J.cathayensis)
グミ科(Elaeagnaceae)
グミ属(Elaegnus)*披針グミ(E.lanceolata)*牛〓果(E.unbellata)
沙棘属(Hippophae)*沙棘(H.rhamnoides)
水東哥科(Saurauiaceae)
水東哥属(Saurauius)*牛桑管樹(S.lantsangenis)
これらに対する学術的な研究、利用法の開発が今後必要になるものと思われた。また、日本への加工調整品の輸出の可能性についても、種々、検討を加えた。一例としてクルミの缶ジュースが既に製品として販売されていたが、日本でも充分に通用するものと評価された。
引き続き、平成8年9月27日から10月8日まで、雲南農業大学の〓天余教授(家畜飼養学)、〓昭芬副教授(畜産学)、和立青講師(作物学)を鹿児島に招聘し、鹿児島大学の研究者と鹿児島県の有用動植物について共同調査した。鹿児島では、県の農業試験場・バイテクセンターなどの試験研究機関の研究者とも意見交換・研究討議を重ねた。日本の西南に位置する鹿児島は、雲南省とも気候的に共通する点もあり、雲南へ導入を試みたいとする有用植物・特に柑橘類などの新品種が見出された。
以上のように、研究者の派遣・招聘を通じて、鹿児島大学・雲南農業大学双方に、有用動植物の実態と利用に関して、多大な調査結果が得られた。