研究概要 |
本年度では、前年度に引き続いて大形の金属ガラスが作製可能な大きなガラス形成能をもつ新しい合金組成の探索、(2)新しい金属ガラスの連続冷却変態(C.T.T.)曲線図の構築とそのデータに基づいたガラス相生成の臨界冷却速度の決定、(3)ガラス形成能を支配している過冷却液体の安定性の機構を解明することを目的として、過冷却液体からの結晶相の各生成、成長挙動の調査、(4)これらの調査から得た最適組成を用いることによる大形金属ガラスの作製、(5)新しい金属ガラスの諸性質の解明、および(6)大型金属ガラスの過冷却液体域での粘性加工性の調査を行った。以下に各項目毎に、本年度で得られた主要結果の概要について述べる。(1)では、Fe-(Al,Ga)-(P,B,C,Si,Ge)系、Pd-Cu-Ni-P系、Nd-Fe-Al系、Pr-Fe-Al系において直径2mm以上の大形金属ガラスが銅鋳型鋳造法により作製できることを見出した。(2)ではPd-Cu-Ni-P系合金のC.C.T.曲線を実験的に作成し、その結果本系合金のガラス生成の臨界冷却(Rc)速度が0.1K/sのきわめて小さな値であることを明らかにした。Rcが1K/s以下となった初めての結果として注目される。(3)ではZr-Al-Ni-Cu系合金でのAlの効果について調べ、結晶化は大きなガラス形成能を示す組成では4種類の化合物が過冷却液体から共晶反応的に析出する様式で生じるが、その組成からずれると、2種類の化合物の析出様式に変化する。この4種類の化合物生成のための原子の再配列の困難さが大きなガラス形成能の要因のひとつであることをつきとめている。(4)本年度で見出した新しい金属ガラスにおいて大形ガラス合金を吸引鋳造法という新たに開発した作製法を用いて作製した結果、最大直径は、Pd-Cu-Ni-P系で40mm、Nd-Fe-Al系で12mmに達している。(5)では、Fe-(Al,Ga)-(P,C,B,S)系金属ガラスが軟磁性を、Pd-Cu-Ni-P系合金が高電極特性を、Nd-Fe-AlおよびPr-Fe-Al系合金が永久磁石特性を示すことを見出し、高機能性金属ガラスとしての発展の可能性を示した。(6)では平成6年度で見出していたZr-Al-Ni-Cu系金属ガラスを用いて過冷却液体域での変形挙動の温度、ひずみ速度依存性を調べると共に、そのデータに基づいて押出し法による微小歯車を作製することに成功している。
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