新しい金属基ガラスの創製と物性を利用した工業材料への新展開

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06102002
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 井上 明久 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (10108566)
• 研究分担者: 張 濤 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (70250818) ; 木村 久道 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (00161571)
• キーワード: 金属ガラス / ガラス形成能 / 臨界冷却速度 / 過冷却液体 / 結晶化挙動 / 強磁性 / 機械的性質 / 超粘性流動特性

研究概要

本年度では、(1)金属ガラスの生成のための臨界冷却速度を精密に測定すると共に、微量添加元素やフラックス処理による効果を調べ、不均質核生成の抑止法についての知見を得る、(2)室温で軟磁性および硬質磁性を示す金属ガラスの磁気的特徴と磁性発現機構に関する知見を得ると共に、(3)新しい組成を探査し、それらのガラス形成能の評価および大きなガラス形成能の原因を究明する、(4)過冷却液体が示す超粘性流動特性の高速ひずみ域での挙動を調査、超粘性流動性を利用した接合特性の評価から、大形金属ガラス作製のための基礎的知見を得る、(5)バルク金属ガラスの過冷却液体域からの結晶化挙動、生成条件を解明する、および(6)シャルピー衝撃値、破壊靱性値、各種応力下での疲労強度、応力腐食挙動などを調べ、金属ガラスの機械的性質に関する総合的知見を得る、の6項目を計画した。以下に、各項目毎に、本年度で得られた主要成果の概要について述べる。(1)では、Pd-Ni-Cu-P合金にB_2O_3フラックス処理を施すことにより、最大直径72mmまでの金属ガラスを作製することに成功し、フラックスが不均質核生成抑止に効果的であることを明らかにした。(2)および(3)の項目では、新しく(Nd, Pr)-Fe-(Al, Ga)系の大きなガラス形成能が異常に高い換算結晶化温度に起因することを解明した。(4)では、Zr-Al-Ni-Cu合金で超粘性流動が生じ、そのm値が0.8〜1.0、また5×10^<-2>の高速歪み速度で340%の塑性伸びを示すことを明らかにした。(5)では、Zr基、Fe基、およびPd基において過冷却液体域からの結晶化挙動を解析し、多成分系金属ガラスを含め大きな過冷却液体域を有する金属ガラスではガラスの結晶化は単一の共晶反応により生じることを明らかにした。(6)では、Zr基、およびPd基金属ガラスにおいてシャルピー衝撃試験を行い、これらの金属ガラスが60〜70kJ/m^2の大きな破壊エネルギーを有していることを実測し、Al基高強度材よりも優れていることを明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] A.Inoue: "Hard Magnetic Bulk Amorphous Nd-Fe-Al Alloys of 12 mm in Diameter Made by Suction Casting" Materials Transactions, JIM. 37, No.4. 636-640 (1996)
• [文献書誌] A.Inoue: "Multicomponent Co-based Amorphous Alloys with Wide Supercooled Liquid Region" Materials Transactions, JIM. 37, No.6. 1332-1336 (1996)
• [文献書誌] A.Inoue: "Viscous Flow Deformation in Supercooled Liquid State of Bulk Amorphous Zr_<55>Al_<10>Ni_5Cu_<30> Alloy" Materials Transactions, JIM. 37, No.6. 1337-1341 (1996)
• [文献書誌] A.Inoue: "Soft Magnetic Properties and Wide Supercooled Liquid Region of Fe-P-B-Si Base Amorphous Alloys" Materials Transactions, JIM. 37, No.11. 1715-1721 (1996)
• [文献書誌] A.Inoue: "Soft Magmetic Properties of Bulk Fe-Based Amorphous Alloys Prepared by Copper Mold Casting" IEEE Transactions on Magnetics. 32, No.5. 4866-4871 (1996)
• [文献書誌] A.Inoue: "Impact Fracture Energy of Bulk Amorphous Zr_<55>Al_<10>Cu_<30>Ni_5 Alloy" Materials Transactions, JIM. 37, No.11. 1726-1729 (1996)