研究概要 |
超伝導磁石,配向膜・あるいはフリースタンディング膜の利用による良質な配向液晶試料の作製法を確立し、本年度購入した固体NMR装置の立ち上げを行ないながら,下記の点を明らかにした. 1.悪魔の階段SC_A*(qr)に関して詳細な実験を行ない、理論との定量的な比較を試み、SC_A*(1/5)やSC_A*(I/3)相の存在をほ“確実なものとし、揺らぎ力の存在および我々のモデルが妥当であることを明らかにした. 2.SC_a*相は非常に乱れた相であり、C-配向べクトル場に転傾(トポロジカルな欠陥)が熱励起されている状態ではないかと考え・揺らぎ力が決定的に重要な役害を演じるので,電界ばかりでなく温度による悪魔の階段も存在するとの説明を試みた.SC_A*-SC_a*相転移をNMRでモニターできるようにすることが今後の課題である. 3.届内にへキサティックな秩序があるスメクティック1_A*(SI_A*)相に関連して,SC_A*の低温側にSI_A*ばかりでなくSI*も存在し・場合によっては降温にともないS_A*い-SI*相転移が起こりうることを明らかにし、SI_A*相の出現にはスメクティック隣接層間における複数個の双極子の相互作用が重要であると結論した。 4.層間隔に対応するブラック反射のX線高次回折を測定し、スメクティツク層の秩序度を求め・SC_A*相の安定性との関連を検討した。 5.分子長軸の傾きと分子のキラリティーにより・長軸まわりの回転熱運動が束縛され、双極子モーメントが方向を揃えてくる様子を、サブピコ秒強カレーザー光源を使った光力一効果により観測することを試み、CS_2などのモデル物質では理想的なデータがとれるようにした。 6.FTIRおよびラマン分光法により,分子の配向秩序度、ンフォメ-シヨン(形)、回転状態などを検討しC=0基がSC*相で束縛回転運動していることが確認された。 7.CD分光法により動的螺旋構造を、強制レーリー散乱により分子の拡散(運動性)を研究した。 8.NMR分光法により,隣接層間における双極子モーメントの対形成や分子の微妙な接触(分子間立体障害)を直接捉え,双極子モーメントの相関や光学分割の素過程を解明することを目的に、重水素化13Cによるエンリッチを系統的に行ない、次年度に備えた。
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