研究概要 |
本年度購入したFTIR分光装置を立ち上げ,増額により購入可能となったCD/ORD分光装置を発注し,H6年度概要に記した3,4,6,7を論文として公表し,さらに下記の点を明らかにした. 1.キラルパックカラムを使ってキラル鎖・アキラル鎖を別々に重水素化したMHPOBCを合成し,偏光FTIR分光測定を行い,SAにおいてもキラル鎖は骨格部に対し54.7°(マジック角)よりも大きく傾き歳差運動していることを明らかにした. 2.キラル鎖および骨格部カルボニル基の偏光赤外吸収スペクトルを[層⊥基板]セルばかりでなく[層〓基板]セルにおいても測定し,SC_A^*の対称性を考慮して解析し,スメクティック層境界に傾き面と平行に発現する自発分極がSC_A^*を安定化するとのP_Xモデルを提唱した. 3.反強誘電性液晶ディスプレイを目指してメーカーにより開発された材料のなかに,直流閾値および履歴現象に特徴づけられた3安定スイッチングとは全く異なったV字型スイッチングを示すものを見出し,固体の常識には反する無閾反強誘電性(Thresholdless Antiferroelectricity)という概念を提唱した.スメクティック層間における分子長軸の傾きの相関が消失した極限として考えられる概念であり,悪魔の段階SC_A^*(q_r)とも密接な係わりがある. 4.サブピコ秒強力レーザー光源を使った光カー効果によりSA-SC^*およびSA-SC_A^*を調べ,SAにおいてcritical slowing downが起こらないことを確認した. 5.^<13>C NMR CP/MASを立ち上げ,SC^*において骨格部の^<13>Cが0.1ppm程度低磁場シフトすることを見出し,カルボニル基を含む骨格部の2面角変化によると推定した. 6.^<19>F NMR MASを立ち上げ,SC^*において5と類似の異常を見出した. 7.^<19>F広幅NMRを立ち上げ,全重水素化したTFMHPOBCを用いてキラル部-CF_3の3ケの^<19>Fによる3本線(triplet)を観測し,-CF_3が高速回転していることを確認するとともに,予備的な解析を行った. 8.^1H広幅NMRを立ち上げ,カラル部-CH_3以外を全重水素化した試料を用いて,7と同様の3本線を観測した. 9.配向セルの評価法および分子の運動性を総合的に評価する拡散測定に関する論文を3報まとめた.
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