戦後日本の形成を生活主体の側面から、出生行動、消費行動、社会意識という3点に絞って検討した。前2者の日常生活の行動レベルでは、1940年代後半の政治的改革と60年代に入っての高度経済成長のあいだの、1950年代に大きな転換点はあったことを実証的に明らかにした。以下、3つの点について記す。 出生行動〜近代化以来ほぼ安定的に推移してきた合計特殊出生率は、1950年代前半に初めて大きな変化を引き起こし、短期間のうちに従来の水準の2分の1に激減した。その実態は、年間100万件をこえる人工妊娠中絶によるものであったが、このような出生行動の変容が、その後の家族の在り方や生活変動に決定的な影響を及ぼした。 消費行動〜1950年代に2つのポイントが見出せた。1つは50年代前半において、戦前回復にむけての消費水準の上昇が、とりわけ食費以外の費目で顕著であり、年間の実質増加率が高度成長期をも上回っていたことである。2つは50年代後半において、戦前とは全く異なる消費の高度化傾向が現れるとともに、これに対する評価も、奢侈から生活革新へと急速に変貌したことである。これら2つの消費行動の特徴は、その後の爆発的な大量消費の基盤を形成した。 社会意識〜1960年代以降にみられる変化の兆しはまだ明らかではなかったが、上記の生活行動の変容が、家族関係や個別の生活意識に微妙な変化を及ぼし始めてはいた(理想子供数、倹約への態度等)。このような意識と行動の不整合が、60年代の生活変動に結びついていくことになった。
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