研究概要 |
今年度はハイドロアイソスタシ-効果による地盤変動量を測定する調査を熊本-諌早-五島間の北緯33度に沿って東西方向で行った。この野外調査は平成4年度5年度も実施したのであるが、本年度は問題点の再チェック的目的で実施した。その結果、縄文海進高頂期(5000年)以降の地盤変動量は五島においては-2m,諌早±0m,玉石湾+2mで、5000年間の変動量は水平距離175kmに対して,3〜4mである。この傾動量は、中田の試算した計算値によく適合している。これを考古学上の問題におきかえてみると、五島列島の縄文前期の貝塚遺跡(福江市江湖貝塚)は-1.6mに基盤がある事実とよく一致する。傾動運動の支点となる大村湾諌早市西域においては伊木力、浜田遺跡等±0m上にあり、熊本県玉名市の尾田貝塚は+3mに位置している。 西九州に多い水中遺跡はこのように後氷期の海水量増加に伴う地盤変動によって生じたものであることが、われわれの測線とした北緯33度で確認された。今後はこの傾動量にもとづいて、縄文早期、前期の水中遺跡の分布推定が可能になり、将来の遺跡保存にむけて情報が提供できるようになった。 なお、今年度は九州北部の水中遺跡を探基礎調査として、伊万里海岸、唐津平野、対馬海岸においてボーリング調査を実施した。本年度はこの資料の分析と西九州の1000年単位の古海岸線を復元した古地理図を作成する。
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