九州えびの高原から発信されている22.2kHzのVLF波を利用して古墳の探査を行い、石造構造物の構造推定を行った。遺跡現場では見掛け比抵抗の分布を調べると共に、電場、磁場各成分の構造に対する反応も検討した。探査場所は、大阪府高槻市の今城塚古墳と福岡県八女市の岩戸山古墳である。 今城塚古墳は大阪府高槻市にある全長340mの前方後円墳で、年代は六世紀前半ごろと推定されている。被葬者を継体天皇とする説が有力である。この古墳の構造探査を目的として観測を行った。VLF波の電場、磁場の各成分、見掛け比抵抗、エネルギー透過率を求めた。解析の結果、異常部分が二箇所にあることが判明した。一つの異常は後円部の東側に、もう一つの異常は前方部と後円部の境界付近に存在した。 岩戸山古墳は福岡県八女市吉田にある全長約135mの九州最大級の前方後円墳で、筑紫国造磐井の墳墓であるとされている。この古墳の石室の位置を推定することを目的としてVLF探査を行った。観測の結果、低比抵抗を示す部分が後円部の中心よりやや南よりに存在すること、後円部の南側、そして後円部中心よりやや北西方向側に高比抵抗の異常部分が存在することがわかった。単に比抵抗の高低だけではなく、ピーク状の変化に注目することによって、後円部中心から南西方向に石室の存在が予想できることを示した。さらに、前方部にも比抵抗の高くなる異常が見られ、この位置を特定した。前方部の異常構造は比較的浅い位置にあることも予測できた。 以上二つの古墳で得られた結果は考古学的解釈に大きく寄与することは疑う余地がない。また、同じ場所で行われた電気探査の結果と極めて整合性の良い結果が得られた。VLF波を用いた探査は、携帯性に優れ、測定も簡便である。測定が容易であっても、得られる結果は極めて信頼性の高いものであることが実証された。本研究は石造構造物探査にはVLF探査は必須であることを明確に示したものと断言できる。
|