本研究は、平坦でない地表を不等間隔に走査した地下探査レーダーデータを処理し埋設物体像を再構成する信号処理法の開発と実証を目的とする。このため実際に平坦でない地面を実験場に作り、その下に埋設した標的を観測してそのデータを上の方法で解析することにより、この手法の精度や適用範囲を実験的に検証し、実用に耐える性能と処理速度を持つアルゴリズムを開発することを目指す。 本年度は、前年度に作成した実験土槽とデータ取得装置を用いて実験場を構成し、この地下に円筒状金属パイプなど単純な形状の物体を埋設して測定実験を行なった。土槽は前面からパイプを自由に抜き差しできる構造となっているので、地質を変えずに標的の構成のみを変化させることができる。この特徴を用いてさまざまな標的に対する処理を行ない再現物体像の分解能や精度を定量的に検討した。 特に太さの異る円筒状パイプに関しては、取得されたデータに従来の開口合成処理を行なった場合にはほとんど識別が不可能であるのに対して、本研究のアルゴリズムによれば形状および寸法をほぼ正確に再現できることが明らかとなった。さらに、推定される媒質の誘電率や減衰率に誤差を与えて推定を行ない、これらのパラメータの推定誤差が形状推定に及ぼす影響を定量的に評価した。
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