本研究は、養護学校に在籍する発語のない重度言語発達遅滞児の学内日常環境における実用的伝達スキルを開発し、その効果的指導法について実験的に検討することが目的である。特に、図形シンボルによる伝達行動の獲得と般化・維持の過程、および社会的妥当性の変化について縦断的に分析するための事例研究を行うものである。今年度は、昨年度から開始した予備研究を継続して行った結果、事例研究の対象児5名の抽出と発達評価、および、図形シンボル用会話エイドの開発を済ませた。 開発した会話エイドは市販のパソコン(Macintosh)上で利用可能なソフトウェアとして提供され、機能の異なる2つのページ(シンボルページとユ-ティリティーページ)で構成されている。シンボルページは図形シンボルを使用するためのページで、(1)選択されたシンボルの音声フィードバックを出力する、(2)選択されたシンボルをウィンドウに表示する、(3)音声モードを切り替える、ことができる。ユ-ティリティーページは使用環境を設定し使用者を支援するためのページで、(1)シンボルの使用データを記録し出力する、(2)シンボルを修正または新規作製する、(3)音声データをシンボルに割り当てる、(4)新しい音声データを新規に登録する、(5)音声モードを設定する、ことができる。なお、事例研究の対象児2名について、会話エイドを学内環境で使用するためのインストール作業(図形シンボルと音声フィードバック用データの登録、入力用デバイスの設定、会話エイドと併用する会話ボードの作製、など)を終了した。
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