研究課題/領域番号 |
06205217
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研究機関 | (財)東京都老人総合研究所 |
研究代表者 |
辰巳 格 (財)東京都老人総合研究所, 言語認知部門, 室長 (40073027)
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研究分担者 |
佐久間 尚子 (財)東京都老人総合研究所, 言語認知部門, 助手 (70152163)
伏見 貴夫 (財)東京都老人総合研究所, 言語認知部門, 研究員 (60260303)
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キーワード | 失語症 / 語聾 / 意味理解 / 喚語困難 / 言い誤り |
研究概要 |
失語症患者の多くは、話し言葉の表出における障害を持っており、日常生活におけるコミュニケーションが大きく阻害されている。本研究の目的は、失語症患者の話し言葉の障害を分析するとともに、それに対する言語治療方法を確立することにある。本年度は、意味の理解が話し言葉の障害に与える影響を明らかにするという観点から、(1)意味理解障害のメカニズムの分析、(2)単語の意味と言い誤りの関係の分析、(3)対面呼称(絵を見て名前を言う)と定義からの呼称(説明を聞いて名前を言う)の関係の分析を行った。 意味理解障害については、話し言葉の意味理解に特異的な障害を持つ語聾患者を対象とし、音声で呈示された単語に関する復唱・語彙判断・理解課題などを施行したところ、単語の理解障害とともに、単語・非単語の判断の障害、非単語の復唱の障害が認められ、理解障害は、音節の同定・単語の同定・意味の同定のいずれかのレベル、または、それら交互作用によって生じえることが示唆された。 言い誤りについては、健常者を対象として、複数の無意味語を復唱させる系列再生課題を行った。従来、「ひじ」を「ひざ」といい間違うように、意味的に類似する単語間で音韻要素の入れ替わりがあることが指摘されているが、無意味語の系列再生課題でも音韻要素の入れ替わりが起こることが確かめられ、単語間の意味の違いが音韻要素の入れ替わりを防いでいることが示唆された。 呼称に関しては、重度失語症患者を対象とし、絵を見て名前を言える単語について、絵の説明を聞いただけで名前を言えるのか、という問題を検討した。その結果、原則として、説明の理解ができれば名前が言え、できなければ名前は言えないことが判明したが、説明が理解できてもそれが曖昧な場合には名前が言えないことがあり、意味理解の程度が話し言葉の想起に影響を与えることが示唆された。
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