分子雲コアの間欠性の起源にせまるために、解析的手法と数値シミュレーションの両面から分子雲を自己重力乱流系としてモデル化して、その構造、動力学の進化を追った。これまでの研究で自己重力乱流系は圧力の効果が無視できる場合は3次元バ-ガス乱流系で近似できる事が分かった。従って、まず、解析的アプローチとして、この3次元バ-ガス乱流系の統計理論を立て、その間欠性の定量化を行った。基本的定式化に基づいた基本的結果をまとめている。さらに、数値シミュレーションのアプローチとしては、すでに3次元自己重力圧縮性流体TVDコードを開発した。これを用いて直接的にこの自己重力乱流系を調べた。このとき、上述した解析モデルとの比較をするためには、同じガウス分布に従う初期条件を設定しなければならない。同時に、重力不安定性による構造形成、つまりコア形成が伴うので、数値シミュレーションでは計算領域の中心で最も顕緒なコアが形成する様に制限された初期データを設定する必要がある。このために、任意のパワースペクトルのもとでの制限条件つき3次元ガウス揺らぎのデータを生成させるプログラムを開発した。これは、分子動力学などの焼きなまし法と酷似しているものである。この初期データから計算実行し、間欠的微細構造の形成、発展を追うための5次精度TVDスキームを開発した。また、現在、スーパーコンピュータを用いても、100^3、または200^3程度の格子数が限界である。この限界を超えるため、並列処理の模索は必須である。従って、我々のコードの並列化も進めた。この自己重力乱流系のモデルでの構造の進化をおさえておくことにより、最近、観測の蓄積からも裏づけられてきた化学進化と比較することが可能な段階に近付いた。それによりどこまでこの単純なモデル系でコア形成などの分子雲の記述ができるかを評価できるようになった。このモデル系は星の活動性などの不確定の多い部分を除いた単純化された系であるが、自己重力、非線形性を含んているので、大局的モデルとして分子雲の性質を反映していることが明らかになった。
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