本年度は、おもに、絵画からの主要色および背景色領域の抽出処理の手法について検討した。絵画を見たときの印象は、絵画のさまざまな要素によって左右されるが、モチーフ、構図、および色彩の分布によるものが大きい。この中でも、特に色彩は、モチーフや構図とも密接に関連し、絵画の中の色彩の分布や使用状況を知ることにより、モチーフについての情報を得たり、構図の概略を知ることができる。本研究では、このような観点から、絵画中で重要な役割を演じている主要な色を抽出する手法について検討した。主要な色の領域を抽出する際には、同時に背景となっている色の領域も抽出することが必要であり、これらは、相互の関連で抽出する。開発した手法を、約400枚の日本の花鳥画について、実験したところ、良好な結果を得られることが判明した。抽出した、主要色領域の情報は、データベース中の絵画を検索するのに利用することができる。たとえば、色とその領域を指定して、そのような属性をもつ絵画を検索することや、「印象語」をキ-として与え、これに関連する色を持つ絵画を検索するようなことが可能になった。
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