筋肉収縮の制御たんぱく質トロポニンT(速筋型)には78種のアイソフォームが存在し、それらはL、BN、BC、BAの4型に分類された。ニワトリ肢筋(速筋)においては発生の最初からL型のみが発現されるのに対し、胸筋(速筋)では発生の進行に伴ってL型→BN型→BC型→BA型と遷移し、成鶏ではBA型のみが発現された。このようなアイソフォームの発現様式がどのように決められているかを調べるために、胸筋の一部を肢筋に移植実験を行ない、TN-Tアイソフォームの発現様式は細胞系列において決定されていること結論した。同様の実験で、肢筋(Gastrocnemius)を胸筋(Pectoralis)に移植してL型の発現を、遅筋(ALD)を胸筋(Pectoralis)や肢筋(Ilio-tibialis)に移植してS型の発現を調べた(下表)ところ移植された筋肉片は本来のアイソフォームを発現し、移植後6ケ月間も維持された。 速筋型特異的抗体と遅筋型特異的抗体を用いた実験では、速筋細胞と遅筋細胞のキメラ細胞が形成されていて、同一細胞内に異なった型のアイソフォームがテリトリ-を持って分布していることがわかった。一般に筋肉の型は細胞分化の過程で不変的に決定を受けるが異なった型の間での相互排除関係は無く、細胞レベルでも組織レベルでも共存できると考えられる。
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