イヌ交叉灌流心標本の左室内に水を満たしたバルーンを装着し、自家製容積サーボポンプに接続した。このサーボポンプにより異なる左室容積で等容性収縮を起こすとともに、正弦波状の心室容積振動(20Hz、左室容積の±1〜0%)を加えた。前回報告した左室前壁に機械振動を加えた場合と同様の約20%の収縮性(Emax)の低下を起こすためには左室容積の±5%程度の振幅が必要であった。振動負荷前後の心臓の酸素消費量(VO_2)-圧容積面積(PVA)関係を比較すると、振動負荷後のVO_2-PVA関係は負荷前のものより傾きが緩やかであった。心筋容積は不変であることから、PVAが大きくなる大きな心室容積では振動の影響をより多くの心筋がより強く受けていると考えらる。この結果より振動の影響の強さとそれを受ける心筋の量の差により収縮性低下に関わるメカニズムが変化すること示唆された。 また今回得られたデータの解析から、容積振動に対する圧振動から求めた心室の瞬時容積弾性率は、収縮期末圧容積関係から求めた容積弾性率(Emax)より常に大きく、両者の差は同一の心臓でも心室容積が大きいほど顕著であることも明らかになった。
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