本研究では、非経験的分子軌道法を用いて量子力学の第一原理から、2体の相互作用ポテンシャルを求め、それを簡単な関数系でフィットし、マクロな効果を含まない2体ポテンシャルを求めることを試みた。具体的な系は、超臨界抽出溶媒として実用にも用いられ、また、様々な実験的研究が行われている二酸化炭素の2体相互作用ポテンシャルを求めることを試みた。さらに、本重点領域研究の溶液構造班からの実験的研究により、超臨界流体中では溶質分子の振動スペクトルが真空中のものに比べ赤方にシフトすることが報告されており、超臨界流体中での溶質と溶媒分子の間に分子クラスタが形成されることが示唆されているので、その構造を調べるために、非経験的分子軌道法を用いて、二酸化炭素-ホルムアルデヒドクラスタの構造と振動スペクトルの計算を行った。 二酸化炭素の2体相互作用ポテンシャルに関して、平成5年度はポテンシャル面を計算しいくつかの関数系でのフィッティングを行ったが、実験結果と計算機シミュレーションの結果を合わせようとすると、そのためのパラメータを導入しなければならないことがわかった。振動スペクトルの計算に関しては、ホルムアルデヒドの水素と酸素に二酸化炭素が1つ配位しても大きな振動スペクトルの変化は見られないが、それぞれに二酸化炭素がつき第一配位圏を形成したあと、炭素上に二酸化炭素が配位すると大きな変位が見られることがわかった。しかしながら、MDによる計算機シミュレーションでは、超臨界流体中で特別なクラスタ構造が安定化する傾向は見られなかった。
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