本年度は、昨年度アルコールとカルボン酸との酸触媒エステル化反応に現われた「臨界異常」と思われる現象についてその詳細を検討するため、各種化合物の超臨界二酸化炭素に対する溶解度測定装置及び超臨界流体中での分子会合現象を検証するための流通式光反応装置の製作を行ないトランススチルベンの光二量化反応、並びに、テトラリンの接触酸化反応について検討した。得られた研究実績を要約すると次のようになる。 1)各種化合物の超臨界二酸化炭素に対する溶解度測定-海砂(100-200メッシュ)を液体クロマト用カラムに充填し、サンプリングバルブを通して測定試料を注入することにより流出してくる二酸化炭素中の濃度をUV-検出器で直接定量する方式を採用したが、得られた結果と既知データとの比較は極めて良好であった。 2)トランススチルベンの光二量化反応-この反応については、既に本研究者等が、亜臨界から超臨界へ移行する領域において異常にトランス体の割合が増加する異常現象を報告していた。今回の実験では、この異常領域に於いて生成してくる生成物を直接単離することに成功し、スチルベンの二量化反応が選択的に起こっている事実を明らかにした。これは、超臨界領域における強力な分子会合を立証する注目すべき実験事実(臨界異常)である。 3)超臨界二酸化炭素中における接触酸化反応-ここで検討した反応系は、酢酸コバルト、臭化コバルトを触媒として用いるテトラリンの酸化反応で、通常の有機溶媒中での反応と比較検討を行なったが、興味深いことに、超臨界二酸化炭素中では、通常の有機溶媒(酢酸)中よりも良好な結果が得られた。
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