Ti_3Alは軽量・耐熱構造用材料として実用化が期待されている。本研究は、Ti_3Al単結晶の巨視的変形挙動を微視的観点から理解することを目的とする。負荷応力軸とc軸とのなす角(φ)が、φ=0°(A)、φ=45°(B)、φ=90°(C)のTi_3Al単結晶試験片を-196℃から1000℃までの温度範囲で圧縮試験すると、(A)の方位では錐面辷りが、(C)の方位では柱面辷りが起こり、(B)の方位では柱面と底面辷りの両方が相継いで起こる。柱面辷りと底面辷りの降伏応力は温度の上昇と共に単調に減少するが、錐面辷りの降伏応力は-196℃から温室付近までは減少し(Stage I)、その後増加して800℃付近で最大値を取り(Stage II)、その後、急速に減少する(Stage III)。柱面辷りや底面辷りの生じた試験片には、主としてらせん転位が観察される。一方、錐面辷りを起こした試片では、-196℃ではらせん転位が観察されるが、-70℃以上の温度では刃状転位に近い混合転位が観察される。特に、Stage IIは、電顕観察の結果からさらに2種のSubstageに分けられる。-70℃〜500℃(Stage IIa)では、転位は2本の超格子部分転位(バーガース・ベクトル1/6<1126>)に分解し、その分解幅は30nm〜数μmに達する広い分布を示す。600℃〜800℃(Stage IIb)では、転位はヘヤ-ピン状に張り出し、超格子反射で観察すると内部に逆異相境界による縞模様が現れることから、これらの転位は超格子部分転位として生成したことを示している。これらの転位の刃状成分は底面上に上昇運動することにより2本の1/6<1103>転位に分解し、刃状成分を強く固着するため、純刃状方向に長く延びた直線として観察される。800℃以上の高温、例えば、900℃(Stage III)では、1/6<1126>(即ち<c+a/2>)転位はa/2転位とc転位に分解する。 以上の観察結果に基づき、Ti_3Al単結晶の各辷り系の変形機構のモデル構築を進めている。
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