研究概要 |
金属間化合物に関する原子レベルでのダイナミックスのシミュレーションとして,分子動力学計算を行った.電子状態に起因した金属特有の諸性質を簡便かつ効果的にシミュレーションに反映させるために,原子間相互作用の記述方法として汎関数多体ポテンシャルを用いた.これにより,C16構造を有するZr_2Niについて,その融点やダイナミックスの実験値を再現する結果を得た.さらに,L1_2構造を有するNi_3AlのΣ粒界のダイナミックスについての解析を行った.この場合,粒界は二つの無限平衡平板として結晶中に導入した.粒界を含む結晶のパワースペクトルは顕著な歪依存性を示し,平衡位置からのずれが大きい場合には,低エネルギー領域にシャープなピークが生じることを明らかにすると共に,単結晶と比較した場合,粒界の存在によりスペクトルの一部にだれが生じることを明らかにした.また,一軸引張を受ける場合のΣ粒界を含むNi_3Alの変形ならびに破壊について分子動力学計算を行い,その過程を明らかにした.歪量が小さい場合には結晶の変形は格子の一軸変形として結晶全体において均一に生じ,粒界における乱れは生じない.歪量が臨界値を超えると,引張軸に対して45°の角度に局所的に変型した領域が不均一に生じる.歪量を増加させるとこの領域は粒界に関して対称に存在するようになる.このように,金属間化合物の変型においては,組織レベルのみならず,原子レベルでも変形は局所的に生じることを明らかにした.さらに,変形した結晶に歪を加えると,粒界部分において破断を生じ,破面近傍の数原子層はランダムな構造を有していることを明らかにした.
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