研究概要 |
高温メスバウア分光により室温から融点付近(<1500℃)までの全温度領域に於て、Ni-Al-X基合金(X=Fe)の状態を高温で直接調べ、出現する相の同定、金属間化合物中に導入したプローブFe原子周囲の局所的な電子状態やそれに基づく結合力、Fe原子の振動状態、さらにはFe原子の拡散によるジャンプ頻度等を明らかにすることが、本研究の目的である。これまで、^<57>Feを含んだNi_<50>Al_<50>-Fe合金の作製でいくつかの問題点を抱え、最近ようやく高温測定を開始するまでに至った:(1)^<57>Fe同位体は高価で、試料溶解は当初、0.5g程度で電子ビーム溶解により行ったが、Alの蒸発による組成のズレが大き過ぎた。そこで、アーク溶解を外部に依頼し、^<57>Feを含んだNi_<53>Al_<46>Fe_1,Ni_<63>Al_<36>Fe_1合金試料を得た。(2)試料が脆く、薄いディスクを作製することが非常に困難である。ビューラー社のアイソカットで500μmまで切段後、100μmまで化学研磨することにより、最終的に測定可能な試料ができた。得られた試料は、B2構造を有するβ-NiAl相の試料であることが、X線解析により確かめられた。 10^<-6>Paの真空度の下、室温から1200℃までの温度範囲で、Ni_<53>Al_<46>Fe_1合金のメスバウアスペクトルの測定を行った。Fe原子はNi原子と同じサイトを占有すると考えられ、スペクトルは主に第一近接の原子配置により決定される。これを考慮すると、第一近接がすべてAl原子の成分と、1個Ni原子がAl原子を置換した成分で解析できる。現在、さらに測定が進行中である。今後、化学量論組成と、Alが多い方にズレた試料を作製し、構造原子空孔がFe原子の拡散挙動に与える影響を調べる予定である。
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